怪我をして怒られる




「ったく、しっかりしろや幾つだてめえは……」
「返す言葉もございませ、っ!か、かっちゃ、めっちゃしみる……!」
「うるせえ我慢しろドジ」
「辛辣……!」


じんじんぴりぴり。怒りを通り越して最早呆れているかっちゃんに、躊躇いなく消毒液をぶっかけられた膝が痛い。いや、雨上がりの鉄板ですっ転んだ私が悪いのは重々分かっている。本当に返す言葉もないし、何ならここまで担いで来てくれたかっちゃんには感謝しかないんだけど、もうちょっと労わってほしいですなまえちゃん泣いちゃう。って言ったら「うるせえ」と頭を叩かれた。痛い。


「おら、終わったぞ」
「ぅ……有難う……」
「めそめそすんな気色わりぃ」
「痛みの余韻に耐えてるだけです……」
「うぜえ」


ガーゼやらテープやらを片付け終えたかっちゃんから降ってきたのは、やっぱり呆れを孕んだ溜息。普通は咄嗟に出るはずの大丈夫かって言葉を未だ耳にしていないあたり、相変わらずというか何というか。

俯く私の前にしゃがんだいつもの顰めっ面が、視界のど真ん中を占領する。


「これが現場だったら死んでんぞてめえ。分かっとんのかコラ」
「分かってるよ……っていうか、現場だったら気ぃ緩まないし」
「あ?ならさっきは緩んでたっつーんか」
「だってかっちゃんが居るんだもん……」
「……」


なんだか良く分からない顔。怒るに怒れないみたいな、叱りたいけどちょっと嬉しくもあるみたいな、たぶんそんな感じ。

数秒黙ったかっちゃんは、結局「勝手に怪我してんじゃねえわクソが」と吐き捨てるように言って、顔を逸らした。



※夢BOXより【怪我してかっちゃんに怒られる】




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