はためく緊張を紐解いて
あっちへよろよろ、こっちへよろよろ。
電車が揺れる度に動く人波に流されて、もう自分がどこに立っているのかも分からない状態に溜息が漏れる。ぎゅうぎゅう詰めってわけじゃない。ちょっとだけ人と人との間に隙間があって、だからこそ、なかなか立ち位置が定まらない。
せめて扉付近にいよう。そう身を捻った瞬間、ガタンッて大きな揺れ。なんとも間が悪い。ただでさえ傾いていた体がバランスを失って、知らない人へぶつかりかけたその時、伸びてきたのは力強い腕だった。
「大丈夫か!?」
上から降ってきた心配そうな声は、同じクラスの切島くん。顔を見なくても分かるそれに、思わず肩の力が抜ける。きっと、人混みを掻き分けて助けに来てくれたんだろう。
「ありがと……」
「お前死にそうになってたぜ」
「見てたの?」
「や、さっきみょうじだって気付いた」
よしよし頭を撫でられ、何はともあれ一安心。上手く立てなくて凭れかかると、途端に固まるのだから面白い。自分からは触ってくるくせに、私が触るといつもフリーズしてしまう。
赤く染まった首元に手を添えれば、ぴくりと震えた彼の肌が硬化した。
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