ブルーブルーブルー




喉元で、流し込んだ炭酸が弾ける。

強い日射しを遮るパラソルの下。眼前には紺碧の空が広がっていて、海面と皆の笑顔がきらきら光る。鼓膜に届く弾んだ声が微笑ましい。寄せては返す波音に耳を澄ますと、すぐ近くでビニールシートが鳴った。

顔を上げれば、半裸姿の爆豪くん。細く見えて、しっかり鍛えられた体がビーチに映える。裾へ向かうにつれ、黒からオレンジへと変わっていくグラデーションの海パンも、よく似合っていた。彼は基本的にセンスがいい。


「てめえはやらねえんか」
「ビーチバレー?」
「ああ」
「うーん……ここで見てる方が良いかな」


適当な相槌を寄越して、ドサッと隣へ座る。触れた肩は水気を帯びていて、ひんやりしていた。切島くんや瀬呂くん達とじゃれ合ってきたのか、泳いできたのか。

それにしても、なんだろうな。この近過ぎる距離感は。空いているスペースが狭いわけでも、シートが小さいわけでもないのに、触れ合ったままの肩が離される様子はない。

ちゃんと好きでいてくれてる証拠かなあって、つい三日前を回顧する。『俺のモンになれ』なんて、ひどく一方的で不器用な告白は、まだ耳に残っていた。爆豪くんは、いつも言葉が足りない。


「なまえ」
「なあに」
「ん」
「ん…?」


半ば押し付けられるように渡されたのは、真っ青なシロップで彩られたかき氷。刺さっているストロー型のスプーンは、一本だけ。


「買ってきてくれたの?」
「てめえの為じゃねえわ。全部食いやがったら殺す」
「素直じゃないなあ」
「うるせえ。黙って食えや」


そっぽを向いた耳が赤いのは、たぶん日焼け。そういうことにしておいてあげて、有難く氷をすくう。舌の上でスッと溶ける冷たさと、ほんのり広がるシロップの甘さが心地いい。


「食べる?」


少しして戻ってきた視線に、首を傾ける。顔を顰めるか、呆れるか、無視するか。そんな風に頭の中で想像した彼の反応は、けれど現実になることはなくて。

大人しく「あ」と開かれた口の中へ、すくった氷を運ぶ。

「そこー!イチャついてねえでこっち来いよなー!」って誰かさんの声には、聞こえない振りをした。



title by 約30の嘘




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