深夜1時11分のおやすみ




疲れたなあって時に、会いたくなる。会いたいなあって時に、連絡をくれる。それが消太さんだった。フィーリングが合う、とでもいえばいいのか。お互い仕事があってそんなに会えはしないけれど、それでも、時間が空いた夜は私を機械越しに捕まえてくれる。


「消太さん」
『ん?』
「好きです」
『……また唐突だな』


ふ、と笑った後『俺もだよ』って返してくれた声が優しくて、どうしようもなく好きで、あまりにも幸せで、ちょっぴり泣きそうになる。

決して話し上手ではない。口数も少ない。どっちかというと、ぶっきらぼうで無愛想。もちろん、女性の扱いに長けているわけでもない。なのに彼は、いつだって私の世界を綺麗に整えてくれる。羊水に揺られているような安心感の中で、肩に乗ったものを払って、とてもゆったり呼吸をさせてくれる。夜になると、普段より少しだけ色っぽく響くその低音で、心ごと全部、さらってくれる。


「消太さん」
『何だ』
「名前、呼んで欲しいです」
『……なまえ』
「もう一回」
『なまえ』


何の躊躇いもなく呼ばれた自分の名前が、胸に浸透する。じんわり緩んでいく涙腺に思わず鼻をすすれば、泣いていると思ったのだろう。『何かあったか』と届いた声は心なしか早口で「ううん、何も」って笑いながら、ベッドにぽふり。もうすぐ時間だ。そろそろ、深夜の一時を回る。

切りたくないなあ。もう少し声を聞いていたい。まさかそんなワガママが言えるはずもなく、そっと息を吐いた。いつもはこんなに名残惜しくならないのに、何でかな。もしこのまま寝落ちしたいって言ったら、彼はどうするかな。


『なまえ』


ああ、ねだってもいないのに名前を呼ばれるって、なんて贅沢なんだろう。

寂しさと嬉しさの狭間で揺れながら「はぁい」って返事をした。ごそごそ聞こえた雑音に、消太さんもベッドへ入ったことを知る。夜ってあっという間。

もう、時間だ。



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