きみがいれば全部へっちゃら




校舎から一歩出ると、もう地獄。燦々と照り付ける太陽に容赦も慈悲もなければ、一生懸命吹いてくれている風すら嫌がらせかと思うほどに生ぬるい。日傘があっても生きていけない。物凄く暑いし日焼けがつらい。夏なんて嫌いだ。嫌いだけれど、大好きな轟くんにくっつけるのはちょっと嬉しい。


「とろろきくんーー」
「?大丈夫かみょうじ。舌回ってねえぞ」


右半身にぺっとり身を寄せ、特に嫌がる様子もなく出してくれた氷に甘える。ひんやりした冷気が皮膚を覆って少し。夏の暑さに熱された体温は、徐々に下がっていった。

心配そうに私を見下ろすエメラルドグリーンはずいぶん優しく、大丈夫だよって思いを込めて「轟くん」と笑ってみせれば、少しだけ口元を緩めて「呂律戻ったな」と頭を撫でてくれる。きっと冬になれば、今度はあったかいこの左手に、たくさんお世話になることだろう。


「はぁー…轟くんいないと死んじゃう」
「?俺はいなくならねえぞ」
「ほんと?ずっと一緒にいてくれる?」
「ん」


へへ、とだらしなくとろけた頬をそのままに、うりうり引っ付く。ちょっと抜けてるけど、優しくってとっても私を大事にしてくれる人間冷暖房イケメンは、どうやらこれからも私専用でいてくれるらしい。

続々校舎から出てきた皆に「みょうじは良いよなー」とか「イチャつきやがって…」とか「なまえちゃんの特権よね」とか、いろいろ言われるまで、あと少し。



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