包まれた好きを呑んで




「ねえかっちゃん」
「あ?」
「構って」
「は?構ってやってんだろ」
「えー。雑誌読んでるだけじゃん」
「ふざけんなてめえぶっ殺すぞ。膝でゴロゴロさせてやっとんだろが」


かっちゃんのこめかみに、ぴき、と青筋が立つ。けれど伸ばした指先ですりすり撫でてみれば、案外直ぐに引っ込んだ。

今の今まで見ていた情報誌が、舌打ち混じりにテーブルへ投げられる。その顰めっ面は、膝の上で寛ぐ私を"これで満足か"と言わんばかりに見下ろした。赤い瞳が細められて、眉間のシワが深くなって。そのくせ、私の頭をくしゃくしゃ撫でる手付きは随分優しいのだから、つい嬉しくってにやけてしまう。つられるように片眉を下げたかっちゃんは、短く息を吐いた。


「たく、にやにやしやがって」
「だぁって嬉しいもん。私だけでしょ?」
「たりめえだクソ。俺はンな安くねえ」


かっちゃんの膝の上で、かっちゃんに可愛がられながら、ひとり占め。いつだって前ばかりを見ている瞳は、私のためだけに振り向いてくれる。これ以上幸せなことって、たぶんない。

さっきまでの不満が綺麗に消えたところで、上体を起こす。「もう良いんか」って声に首を横へ振って応えると、溜息を吐いたかっちゃんはそのまま後ろへ寝転がった。きっと、言わんとすることが分かったのだろう。叩いて示されたのは、わざわざ空けてくれた隣のスペース。

高揚するふわふわした心地のままに飛び込めば「甘えん坊は変わんねえな」って笑いながら、めいっぱい抱き締めてくれた。



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