いたずらに惚気



着替えを持って、いつも通りに指を引っかけた扉。なんか良い匂いすんなって、欠伸まじりに顔を上げてビックリ。バスタオルを体に巻き付けたなまえが、洗面台の前に立っていた。部活の疲れも眠気も何もかも、一気に全部飛んだ。


「あ、わり」
「……や、私こそ、鍵…ごめん」


ほこほこと湯気を纏う肌が赤く染め上がる。そうか。今日は泊まりに来るって言ってたっけ。なんつー役得。


「お帰りなさい」
「たでーま」
「ごめんね。先にお風呂頂きました」
「いえいえ。自由にお使いくださいな」


恥ずかしそうななまえが、綺麗に微笑む。タオルの合わせ目をしっかり押さえて寄ってきたかと思えば、俺の胸元へぽふり。湿った髪、無防備な素肌、女特有の柔らかさ、華奢な体躯。嫌でも意識してしまうそれらに理性がくすぐられ、慌てて脳内で素数を数える。

とりあえず、俺の彼女は今日も可愛いです。

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