終わりと始まりの狭間



コタツに忍ばせた足が触れ合う。きっと狭いだろうのに、勝己が私の隣から動く様子はない。つまんだスナック菓子を手に、年々逞しくなっているように思う肩へ頬を預ける。「こぼしやがったら殺す」と言われたけれど、たぶん照れ隠し。いちいち気にしたりしない。

にしても困った。今年こそ起きてようって、いつも寝顔を見られてばかりな勝己の寝顔を今年こそ見てやろうって思っていたのに、なんだか眠い。年末恒例のお笑い番組で腹筋が痛くなるほど笑ったからか、それとも小腹が満たされているからか、勝己に触れているからか、はたまた全部か。


ぱりぱりスナック菓子を食べながら瞼を擦る。目敏く気付いた彼はテレビの音量を下げた。そうして手首を掴まれ「擦んな」って声とともに、視界へ入ってきた整った顔。


「眠ぃならベッド上がれや」
「ねむくない」
「何意地張っとんだアホ」
「ほんとにねむくないもん」
「目ぇ寝てんぞ」
「起きてるよ、ほら」


一度閉じた瞼を押し上げる。気合いを入れてキリッとしてみせたら、目前の勝己が「顔」と吹き出した。そんなに面白い顔をしたつもりはないんだけれど、どうやらツボにはまったらしい。一頻り肩を震わせ、一息つこうとジュースを飲んだ後でさえ思い出し笑いをしていた。まあ随分と楽しそうで何より。今年最後に勝己の笑顔が見れて良かった。

お菓子もちょっと飽きてきたし、蜜柑でも食べようかなって手を伸ばす。来年まで、あと三分。


「ねえ勝己」
「あ?」
「いろいろ有難うね。勝己のおかげで楽しかったし、乗り越えられたこともあったし、大変お世話になりました」
「おう」
「来年もよろしくね」
「ハッ、仕方ねえから面倒見てやんよ」
「ふふ、そういうとこ好き」


わこわこ蜜柑を剥きながら、始まったカウントダウンへ耳を傾ける。「なまえ」と腰を抱き寄せられて顔を上げれば「あ」と口を開いた勝己がいて。蜜柑を一切れ食べさせてあげたら、年が明けた。


「明けましておめでとう」
「明けおめ」
「今年もよろしくね」
「さっき聞いたわ」


くしゃくしゃ頭を撫でてくれた手つきは、とっても優しかった。

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