等濃的に相対



「勝己!」
「わぁってら!任せろ!」


呼応するように、大きな爆発音が轟いた。砂や粉塵を巻き上げ全身を襲う爆風になんとか耐え、器用に勢いを殺して着地した勝己へ駆け寄る。ものの見事に倒れた巨大ロボットの足裏にある停止スイッチを揃って押し込めば、ミッションクリアの軽快なメロディが鳴った。




「最速いえーい」
「やんねえわ。ガキか」
「良いじゃんハイタッチくらい」
「良くねえ」
「はい、まずポケットから両手を出してー」
「やめろクソなまえ。つーかてめえ、最後吹っ飛ばされそうになってやがったな」
「あ、バレた? ちょっと風がねー」
「風がンだコラ」
「いや慣れてなくてさ。私が」
「ハッ、雑魚」
「はいはい。勝己様には敵いませんよー」


ああ、演習達成後のお菓子って何でこんなに美味しいんだろう。

ハイタッチは素直に諦め、スナック菓子をパリパリ咀嚼する。渇いた喉はミルクティーで潤した。勝己はと言うと、すっかり寛ぎモードで隣の芝生に寝転がった。


緑化保全委員会が管理しているこの温室は、緑の豊かさはもちろん、ヒーリング効果抜群な鳥の声を流しているだけでなく、綺麗に生い茂った草木がプライベートな空間までもを保持してくれる、正に最高の空間だ。誰にもバレず、ゆったりのんびりするには最適。最近勝己を連れて来ては、お茶会やら反省会やらをしている。いや、主に反省するのは私だけだけど。


「勝己も食べる?」
「要らねえ。ンな食ってっと豚んなんぞ」
「ならないよ。私がスリムボディなの知ってるでしょ」
「知るか」
「あれー? 昨日夜中に人のこと呼び付けて湯たんぽ兼抱き枕代わりにしたの誰だっけー?」
「チッ」


多少の罪悪感があるのか、それとも単に文句を言おうとしたのか。仰向けになってこちらを見上げた勝己の唇へ、勝己のために買ってきた激辛チップスを押し当てる。眉間のシワは深まったけれど、そのまま食べ始めたあたり不服ではなかったらしい。バリバリと豪快な咀嚼音。喉が上下して、口が開かれるままに次のチップスを差し出す。なんだか餌付けしている気分だ。


「水無しで食べてるけど、辛くないの?」
「ん。そんな」
「ほんと?」


じゃあ私も食べてみようかなーって一口齧る。パリッて良い音がして、そのままもぐもぐ。あ、意外といけるかも、なんて思い始めた瞬間。舌が痺れるくらいの辛さが、鼻の奥から喉全体を駆け抜けていった。

あまりの辛さにミルクティーをがぶ飲みする私に対し、勝己は心底ご満悦らしい。それはそれは楽しそうにケラケラ笑っていた。絶対許さないけど、久しぶりの笑顔にちょっとキュンとした。いや、絶対許さないけど。

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