不変たる想い
日没が早くなって、随分と冷えてきた仕事終わり。元々の低体温のせいか、じわりと悴む手をすり合わせてあたためていれば、ポケットのスマホが振動した。何かと思えばなまえからのLINEで、思わず緩んだ頬を慌てて引き締める。
『仕事終わりだよね?お疲れ様\( '' )/』
相変わらずの可愛い顔文字に小さく笑いつつ、指を滑らせて返事を打つ。確か今日は社内ミーティングで遅くなると、この前言っていたような気がする。
『有難う。なまえもお疲れさん』
『ほんとね(´・ω・`)ありがと!』
『もう終わったのか?』
『まだだよー(´△`)今少休憩(笑)もー帰りたいし早く会いたい』
『何時に終わりそう?』
『んー…まだちょっと分かんないから家で待ってて(*´°ω°)』
時刻を見れば、夜の八時をまわったところだった。取り敢えず『無理するなよ』とだけ送り、車のエンジンをかける。
なまえが勤めている会社の場所くらいは知っていた。
俺と違って彼女は無個性で、こんなに暗い夜道を一人で帰って来させることは憚られたし、早く会いたい、なんて言われてジッと帰りを待っていられるほど薄情でもない。
会社への道は分かりやすく、ものの数十分で到着した。車の中で待っていては分かりづらいだろうと、エンジンを切って外へ出る。携帯を開けば『大丈夫(`・ω・´)』ときていた。
この様子だと、まだ終わっていないのだろう。無理をしていなければいいが、まあ仕方ない。本人が望んだことだ。
俺としては家にいて欲しいが、籍を入れるずっと前から、経済的にも助けたいと言われていた。今更やめろとも言いづらい。
早く会いたいと先走る気持ちを宥めつつ、ぼんやり待つ。
前方から聞こえてきた足音に顔を上げれば、一瞬、ピタリと止まってから駆け寄ってくる華奢なシルエット。見間違うはずのないそれは、確かになまえだった。
「消太、なんで、」
「早く会いたかったんだろ」
戸惑っているようでいて嬉しそうな、何とも複雑な顔がおもしろい。
助手席の扉を開けてやれば、お礼を言いつつ乗り込んだので、俺も運転席に引っ込んだ。暖房の温風が、冷えきった車内をあたためていく。同時に凍りそうだった身体も、少しずつ温度を取り戻していった。
「ずっと待ってたの?」
「いや、そんなに」
「……嘘」
スッと伸ばされたなまえの両手が、俺の左手を包み込む。
「すごい冷たい」
ハーッと、あたためるように吐きかけられた息が熱い。元々冷えているから大丈夫だと言っても、なまえは頑なに、俺の手を離そうとはしなかった。どころか「そっちも」と促され、右手もとらわれる始末。
勿論あたためてくれるのは嬉しいが、正直なところ、なまえの熱を奪ってしまわないかと心配で。
「……なまえ」
「なに、っ……」
身を寄せて、こちらを見上げた薄い唇にキスを落とす。
「帰ったらあっためてくれ」
素直に頷いたなまえは「任せて」と、ほんのり上気した頬を緩ませて、とても可愛らしくはにかんだ。