レモン味とはほど遠く



緑谷くん曰く、私が勝己の初カノらしい。あの暴君を呼び出して告白をする勇者がそもそも少ない上、興味がないとか面倒くさいとかでこっ酷く振っていたのだとか。まあ何とも彼らしいエピソードに納得したのは言うまでもない。

いや待てよ。それならもしかして、勝己の唇は、まだ真っ新ってことだろうか。気になる。非常に気になるけれど、素直に聞いてみたところで、強がるか鼻で笑われるかのどちらかだろう。ってことで反応から推し測ろうと、ベッドで寝転がっている勝己に触れるだけのキスをしてみたのだけれど……うん。


「顔真っ赤」
「ッうるせえ!急に何しやがんだ死ねカス!」


さっきまでの余裕はどこへやら。顔のすぐ横で爆発音が轟き、鼓膜がぐわんぐわん。「ごめんごめん」って平謝りで許してくれるはずもなく、再び向けられた手のひらから慌てて逃げた。

いや、まさかそんな照れるとは思ってなかったんだよ。やっぱり初めてだったんだね勝己。ご馳走様です。

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