見透かされた心



雄英の校門に着いて間もなく。いかにも、な、スモーク張りの黒いセダンが静かに停車した。助手席の扉を引き、お礼を言いながら乗り込む。軽く返事をした廻さんは、手袋をはめたままの手で私の前髪をひと撫でしてから、アクセルを踏んだ。


全寮制の話を断ってからというもの、時間が空いていれば廻さんが。空いていなければ玄野さんや音本さんが、送り迎えをしてくれるようになった。いくら断る為に提示した条件とは言え、正直、乗せてもらうばかりの私としては、都度申し訳なさしか浮かばない。


「廻さん。私やっぱり、寮に入った方がいいと思うんだけど」
「ダメだ」
「何で?」
「病人共と同じ空間で息がしたいのか?」
「そういう訳じゃないけど、送り迎えなんてやっぱり悪いし……」
「俺のしたいようにしているだけだ。お前が気にすることはない」


視線は前を向いたまま、自由な片手が再び伸ばされ、くしゃくしゃ髪を乱していく。そうして躊躇いなく私の手へ重ねられた温もりに、思わず心臓が跳ねた。

俺と寝れなくなるぞ、なんて、狡いよ廻さん。

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