フリーズストップ



頭脳明晰。容姿端麗。冷静沈着。まだ高校三年生ながらプロ以上の実力と判断力を兼ね備えたみょうじなまえは、当然現場へ引っ張りだこ。殆ど学校には姿を見せず、忙しない日々を送っていると風の噂で聞いた。ふわふわしていた一年の頃とは大違いだなと、ニュース記事を見ながらゼリーを飲む。


「またなまえちゃん載ってるな!」
「うるせえ」
「おはよー」
「おはようございます」
「みょうじさん大活躍ねー。鼻が高いわー」
「そうですね」


何だかんだ生徒のことはチェックしているらしいマイクとミッドナイトさんに相槌を返す。何でも、SNSで検索をかけてまで見ているらしい。ご苦労なこった。


「そうそうイレイザー!朗報だぜ!」
「何だ」
「こないだ知ったんだけどよ、なんとなんと、俺のリスナーだったんだぜ彼女!」
「そうか。良かったな」
「しかも聞いてくれ!」
「まだあんのか」
「ラジオネームが、びっくりんごりらちゃん!」
「しりとりかよ。……いや待て、どっかで見た名前だな」
「正にそう!死んでんじゃねえかってくらい動いてねえお前のツイッターの、一番最初のフォロワーだ!」


そんなまさか。

一瞬のフリーズから抜け出し、長らくログインすらしていないアプリを開く。マイクに促されて渋々作っただけであり、三回程マイクが勝手に呟いただけのアカウントである。取り敢えず近所の黒猫をアイコンに使っているそのフォロワー欄には、確かにびっくりんごりらがいた。マイクが何でそこまで知ってんだ気持ち悪いなってことはさておき、これが本当にあのみょうじだとしたら、つまり、それは、えっと。うん?

とりあえずツイート欄を見てみれば、俺のヒーロー名が目に留まる。ついで呟かれている”会いたい”なんて文字に、フリーズどころか全思考が止まった。

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