星になったジェラシー



少しだけ趣味が合わない、なんてのは、誰にでも良くあることだと思う。好みの味も匂いも服も、むしろ全く同じ人を見つける方が難しい。

音楽だって例外ではない。上鳴くんと私の好みも、少しだけ合わない。それに比べて、響香ちゃんは良いよね。音楽のセンスがぴったり全部一緒でさ。CDの貸し借りなんて日常茶飯事で、あのバンドの新曲出るよね、なんて話も楽しそう。

もういっそ、私より響香ちゃんといる方が良いんじゃないかな。上鳴くんは、全然そんなことないよって言ってくれるけど、どうしてもそう思ってしまう卑しい私は、きっとヒーローの卵失格。


「おーい。なまえさーん?」
「……なあに」
「お、まーたしょげてんの」
「今、絶賛自己嫌悪中なの」


よいしょって隣に座った彼から、顔を逸らす。こんな風に今はダメってお知らせをしたら、いつも空気を読んで一人にしてくれる。でも、今日は違った。

「なまえ」って名前を呼ばれて、ちょっと無視してもやっぱり呼ばれて。五回目くらいで振り向いたら、めいっぱい抱き締められた。薄いTシャツ越しに上鳴くんの体温が伝わってきて、戸惑いと嬉しさが綯い交ぜになる。


「珍しいね」
「あー、うん。今までそっとしといた方が良いんだろうなって思ってたけど、やっぱ構いてえのよ。嫌だった?」
「ううん。嬉しい」
「そっか。なら安心」
「好き」
「俺も好き」


へへって笑う嬉しそうな声。ちょっぴり泣きそうになりながら、その首元へと顔を埋める。こうやって呆気なく絆されてしまう私は、どうしようもなく上鳴くんが好きだった。

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