君を否定させやしない



ねえ、どうして分かっちゃうんだろうね。不安で眠れない夜も、無理やり切り離した心も、何も考えないようにひとりで蹲っては隠して笑う私を爆豪くんは抱き締めてくれる。

ぎゅうって強く。まるで安心させるように、満たすように。痛いよって言葉すら喉の奥で萎縮してしまった私の、こんな脆い心ごと全部、ぎゅうって。


「大丈夫だよ。心配しないで」
「そうじゃねえだろ」


耳元で響いた声は、いつもより少しだけ優しかった。使い方がなってねえわ、なんて、ずいぶん難しいことを言う。せいいっぱいの虚勢も、彼の前では無意味なんだなあ。


「なまえ」
「ん?」
「大丈夫だ」


ぎゅうって強く、抱き締められる。
まるで、正しい"大丈夫"を教えてくれているよう。あったかくて、ほんのり甘くて、つい身を委ねてしまうこんな私を丸ごと全部許してくれるよう。


「てめえは何も間違っちゃいねえ。支えてやっから、俺の言葉だけ信じてろ」


多くを語らない爆豪くんの声は、凛としていた。自然と頬を伝った涙も、音にならなかった有難うも、彼の唇が拭ってくれた。

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