わたしの特権



小さい頃からずうっと一緒。家が近所で、お母さん同士の仲が良くて。あたたかい陽だまりの中でお昼寝をしながら、特に喧嘩をすることもなく、穏やかにのんびりマイペースに育った。英の隣は心地がよかった。不思議と自然体でいられた。流れる時間も纏っている空気も、ひどく緩やかでゆったりしているからかもしれない。


「有難うね」
「……何だよ急に」
「ずーっと仲良くしてくれてるから」
「別になまえの為じゃないけど」
「それでも嬉しいのー」


お昼に誘っても、一緒に帰ろって声を掛けても、遊びに連れ出しても、いつも応じてくれる。そりゃ面倒くさそうにするし、第一優先は勿論バレーだろうけど、合間合間に構ってくれるだけで十分だった。だってたぶん、私の特権だ。ちょっと会いたいなあって時にこうして会えるのは、素直に嬉しい。


「ほんと好きだな」
「何が?」
「俺のこと」
「うん。好きー」


へらり。笑ってみせれば、はあって溜息が返ってきた。俯いた英の表情は見えない。さらりと流れた黒髪が、頬を隠してしまった。


「人の気も知らねえで……」
「何か言った?」
「何でもない」
「?」

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