第一号と呼んでください



私の世界は、にゃんこさんを中心に回っている。野良だろうと首輪付きだろうと関係ない。世の中に存在するにゃんこさんは、等しく可愛い。虐めるやつは誰であろうと許さない。本来夜行性である彼女達に合わせて私も夜に動くし、いろんな種類のにゃんこさんがお目見えする集会には必ず顔を出している。いや可愛い。何がって、全部ですよ全部。


「はあ、可愛い……」


ゴロゴロ喉を鳴らしてくれる三毛猫さんマジ天使。なんて、今日も今日とて撫で撫でしていたら、急に耳がぴくっと立った。何かと思えば、背後で足音。嫌な人間だったら直ぐに殺せるよう、制服の下に隠してあるナイフを確認しながら振り向く。

私に気付いて立ち止まったのは、長身の男だった。頭の天辺から足の先まで、全身真っ黒な男。月明かりに照らされたその顔には、見覚えがあった。前に一度だけ、弔くんから画像を見せてもらったことがある。確か雄英高校の先生で、プロのヒーローだ。ああ、厄介なのに出会っちゃったなあ。どうしようって思考すること三秒。先に口を開いたのは、彼の方だった。


「学生がこんな時間に出歩くもんじゃねえぞ。危ないから早く帰りなさい」
「へ……」


全く予想だにしなかった言葉に、目が丸くなる。思わず漏れた間抜けな声は、どうか見逃して欲しい。だって仕方ないじゃない。いくらまだ華の十七歳といえど、これでも敵連合に参入してからそこそこ経っている身だ。まあ、にゃんこさんを愛でづらくなるから露出は控えているけれど、まさか知られていないとは吃驚だ。しかも普通の学生扱いな上、心配して声を掛けてくれただけだなんて、何だこの人。優しさの塊じゃん。気付けばにゃんこさんも擦り寄ってるし、もしかしなくてもめちゃくちゃ良い人なのでは。

言いようのない嬉しさがじわじわ込み上げて、胸に温かい何かが生まれる。うん、決めた。


「SNSとかやってます?」
「は?」
「ID教えて欲しいです。フォロワーになりたいです。っていうかなります!」


私、今日からあなたのファンになります!

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