永遠に愛される方法


 どうして恋人なんだろう。ふと考える。やっほ、元気? そう悟が訪ねてくる度に、どうして私たちは恋人なのか考える。気まぐれに会って話して体を重ねるだけなのに、恋人でいる意味はあるのだろうか。

「悟は私のこと好きなの?」
「ふはっ、また急だね」
 穢れひとつ知らないようなきれいな色の前髪が、喉の震えにあわせて揺れた。
「どしたの。不安になっちゃった? 久しぶりだもんね、僕ら」

 無骨で大きな手のひらが、私の手首をやさしくシーツへ縫い付ける。口の端で妖しく微笑む悟越し、月夜に染まった天井は灰色だった。

「不安……はないかなぁ」

 そう、不安はない。不思議なことに悟の好意を疑ったことは一度もない。離れている間についても心配していない。悟の彼女は私ひとりで、私の彼氏も悟ひとり。ただ、だからといって恋人でいる必要もないと思う。だって私たち、心がまるで通じていない。悟は私に頼らないし甘えない。どこで何をしているか興味もない。他人とさほど変わらない。ただ好きなだけ。たまに顔が見たくなり、ちょっと触れて生存確認するだけの存在。

 はたしてそれは恋人だろうか。恋人とは、もっと自分を見て欲しくなったり、傍にいるだけで安心したり、言動ひとつに一喜一憂したり、世話を焼きたくなったり、独占したくなったり、ずっと一緒にいて欲しかったり、世界で一番大切だったりするものではないのだろうか。

「なに、好きな奴でもできた?」
「ううん」
「じゃあ僕のこと好きじゃなくなった?」
「ううん、好きだよ、ずっと」

 でも心が動かない。

 言うと悟はほんの少し目を見張り「それがいいんだよ、なまえは」と首元にうずまった。