ほのぼの



うーんと伸びをする。青い空に白い雲。夏って呼ぶにはちょっと早い、ひんやり冷たい風。お昼寝に最適な暖かい陽気。こんな日に室内で机に齧り付いているだなんて勿体ない。

陽の光を浴びながら欠伸を一つ。壁を隔てた体育館内からは、ボールの音や生徒の声が聞こえる。バスケしてるんだなあなんて思いながらうとうと微睡んでいれば「あ!」と。よく知っている声が、真っ直ぐ鼓膜を抜けていった。


「なまえさんじゃないっすか!」
「やっほー」


誰かと思えば、後輩のリエーフ。ひょっこり出てきた彼を「ちょっと体育館シューズ」って窘める。「コンクリだし良いじゃないっすか」なんてにこにこしながら隣にしゃがんだ彼の綺麗な髪が、太陽の光を反射した。


「サボりっすか?」
「違うよ。休憩中」
「違わないじゃないすかー」
「違いますー」


声のボリュームは抑えつつ、へらりと笑ってみせる。

別にサボっているわけではない。音駒は年に一度、美化活動と言う名の経費削減の為、こうして午後の一時間を使って校内の草抜きを命ぜられるのだ。あんまり下ばっかり向いていると肩が凝るから、ちょっと休憩してるだけ。


「リエーフは背高いから重宝されるね」
「んー…でもバスケよりバレーがしたいっす」
「お、感心感心」
「早く上手くなりたいんで!」
「良いね良いねー。目指せやっくん」
「何で夜久さんなんすか……」


きっと地獄のレシーブ練を思い出したのだろう。嫌そうな顔にくすくす笑う。からかってごめんね。黒尾みたいにかっこよくスパイク決めたいんだもんね。

お詫び代わりに「期待してるよ。次期エース」って背中をぽふぽふ叩いてやる。途端に元気になったリエーフは、とっても嬉しそうに笑った。




【夢BOX/リエーフとほのぼの】