じわじわ虜



もう最悪や。何なん今日。めっちゃ寒いやん。何なんほんま。今年は地球温暖化やって調子こいてたせいもあるけど、ちょっと急に寒なり過ぎとちゃう? 衣替えが全っ然間に合うてへん。我が家まだサンダル出とんで。冬もんのあったかいカーディガン着よう思ったんに、クローゼットにあったんはまさかのサマーカーディガンとブレザー。ついでに言うと、寒すぎて普通にベッドから出れやんかったせいで探す時間もなかった。マジ無理。凍える。

って心ん中でぶつくさ文句垂れながら、両手をポケットに突っ込んで震えとったら、でっかいブレザーに包まれた。背中から伝わる人肌の温度が、ええ感じにあったかい。この柔軟剤の香りは知っとる。絶賛クラスメート以上になりつつある角名や。


予想通り、見上げた先にはいつものスッとした目。


「寒さマシになってきた?」
「おん。めっちゃ温い」
「良かった。震えてるからびっくりした」
「寒かってんもん……」
「みょうじ肉なさそうだもんね」
「それはセクハラ」
「ぇえ?」


困った顔をしながらも、くすくす笑う角名に凭れかかる。よろけることなく踏ん張ることもなく。全く微動だにせんあたり、しっかり男の子でキュンキュンする。しかも結構な高身長やから、私なんかすっぽりや。ぽっかぽかで快適。


「はぁ……ずっとこうしときたい」
「俺もこのままで居たい」


冗談なんか本気なんか。まるで離したないって言わんばかりにきゅうっと抱き締められて、心臓が締まった。



【夢BOX/角名くん】