向日葵に鳴る鼓動



部活のない月曜日。
皆でカラオケに行こうって誘いを断って、下駄箱に向かう。時計がある柱の下。ついこの間、死ぬほど緊張しながら振り絞った勇気を嬉しそうに受け取ってくれたみょうじは、既にそこで待っていた。
名前を呼んで、謝りながら駆け寄ると「全然待ってないです」と笑う。控えめに覗く八重歯が、柄にもなく可愛いと思った。


「あの、この後時間ありますか?」
「あるけど、どうした?」
「ちょっと小腹すいちゃったのと、先輩とどこか行きたいなって…」


俯きがちにこぼされた、恥ずかしそうな声。
面食らうと同時に胸のあたりが熱を帯びて、なんとも言えないむず痒さに思考が停止する。好きだと自覚したあの日から、みょうじの前では上手く頭が回らなくなってしまった。すぐに良い店も浮かばず、とりあえず近所のファストフード店を挙げれば、満面の笑みで俺の手を掴むのだから心臓がもたない。


「…お前、意外と積極的だよな」
「えっ、あ、ごごごごめんなさい」
「いや、いい。嫌じゃねえ」


慌てて離れたその手を、今度は俺から繋ぐ。小さくて細っこくて簡単に折れてしまいそうなそれは、ぴくりと震えた後、何の躊躇いもなく握り返してくれた。


いつも明るく、素直で真っ直ぐで。
そんなところに惹かれたのだと、改めて実感する。観客席にその姿を探すようになったのはいつからだったか。

お疲れ様です。
かっこ良かったです。

そう笑ってくれるみょうじが、いつの間にか、俺の支えになっていた。



照れたように頬を緩めたみょうじは「先輩相手だと、体が勝手に動くんです」と言う。たく、ほんとにこいつは、どこまで俺を舞い上がらせれば気が済むのか。
どういうことか話を広げるのは、俺が耐えられなくなりそうなのでやめにした。