点と点が繋がって



及川の大ファンである可愛い可愛い後輩に「お願い!一緒に行ってください…!」と頼まれて付き添った男子バレー部の練習試合。私の視線をものの見事に奪っていったのは、噂の及川ではなく、かっこよくスパイクを決めて皆を引っ張っていく岩泉の、子供みたいな笑顔だった。

同じクラスだけれど、いつも及川が傍にいるせいか、怒っていたり顰めっ面なイメージしかなかったものだから、あんな風に笑うだなんて、想像もつかなかった。


試合が終わって、出待ちをしに行くと言う後輩に連れられ、校門でのんびりバレー部を待つ。体育館の出入口だと、すぐ着替えに行ってしまうのであまり長くは会えないそうだ。帰り際なら少し話をしてくれるらしい。

本当にアイドルみたいな扱いに思わず笑ってしまう。手渡すために作ってきたらしいクッキーの入った紙袋を大事そうに抱える彼女は、とても可愛らしい。恋をしている女の子はキラキラしていて、とっても素敵だ。

そう、微笑ましく思っていれば、視界の端に、四つの影が映った。

じゃれ合いながら歩いてきた四人は、私達に気付くと立ち止まってくれて、及川は、彼女が差し出した紙袋を笑顔で受け取ったようだった。心底嬉しそうに及川と話す後輩の笑顔に、来てよかったなあと思う。


邪魔をしないよう、少し離れた所で見守っていれば「お前も及川待ちか?」と、聞き慣れた声が降ってきた。いつの間に隣へ来ていたのか、見上げた先には岩泉。バレー部の中にいると目立たないけれど、こうして見ると、結構背が高い。


「ううん。付き添い」


胸の高鳴りを誤魔化すように、ちょいちょい、と彼女を示せば、納得したような安堵したような息を吐いた岩泉の眉間から皺が消える。そうしてこちらを見下ろした視線とかち合うも、すぐにどこかへ泳いでいってしまった。

もしかして私の顔に何かついているのだろうか。こっそり携帯ケースの鏡で確認したが、前歯に青海苔が挟まっているなんてことはなかった。


不思議に思っていると、とん、と軽い衝撃。肩に当たったのは岩泉。どうやら押されたようで、律儀に謝った岩泉は、悪戯っ子精神旺盛な花巻の頬を摘んで窘めていた。
何か言い合っているようだけれど、良く聞こえない。まあ、いつも通りのちょっとしたじゃれ合いだろう。

そういえば、試合を終えたばかりのレギュラーメンバーを前にして、労いの一つも言えていないことを思い出す。
話しかけるタイミングを窺っていると、丁度よく岩泉が振り向いた。


「お疲れ様」
「ん」
「スパイクかっこよかったよ」
「おぉ、…ありがとな」


少し照れたように笑う岩泉に、私の頬も緩む。
この笑い方もいいなあ、なんて。岩泉は、きっと私のことなんて気に掛けていないだろうから、口にするのはやめておいた。

ところで、花巻は何であんなにニヤニヤしているんだろうなあ。明日聞いてみよう。