今日もきみの夢を見る



「眠い?」
「……ねむくない、おきる」
「無理しないで寝なよ」
「やだ……」
「何で?」
「せっかくのいっせー…ムダにしちゃう……」
「何それ。可愛いけど、明日もいるから大丈夫だよ」
「んん……」
「ほらなまえさんや。ベッド行こ」


うとうと、うとうと。さっきから殆ど開いていないなまえの瞼へ唇を寄せる。眉間に寄ったシワを指先で押してみれば、小さな口がもごもご動いた。これは寝てるな。たぶん。

俺の肩に凭れたまんま、俺の片腕にすっぽり収まったまんま夢の世界へ旅立っている愛しい寝顔は幾分か幼い。変に身構えてしまうかもって不安は、どうやら杞憂に終わりそうだ。思い切ってお泊まりに誘って良かった。


ピンクやブラウンのラメがいない瞼、些か薄い眉、細い睫毛、自然な色の唇。恥ずかしいからってあんまり見せてくれなかった素っぴんを堪能して、華奢な体躯を抱き上げる。綺麗に化粧をしている普段ももちろん好きだけれど、全体的に薄くなった今もずいぶん可愛かった。

俺に気を許しているような無防備さに男心をくすぐられつつ、そうっとベッドへ下ろす。よく眠っている。かと思えば、不意に小さく唸ったなまえの手が伸びてきて、俺の服を掴んだ。


「どしたの」
「……」


うっすら開いた瞼から寝ぼけ眼が覗く。ふわふわ空中を漂うのは、聞き取れるか取れないかくらいの舌っ足らずな声。


「いっしょにねないの……?」


あー……もう。何でこんな可愛いの。好き。なんてつい緩んでしまいそうな頬を引き締め「寝るよ」と触れるだけのキスを落としながらテレビを消した。

電気のリモコンを枕元へ置き、既に温もりはじめている布団へ潜り込む。もそもそ寄ってきた体温を抱き締めれば、ベストポジションではなかったのか。少しの間身じろいだなまえは、俺の腕へ頭を落ち着けるなり大人しくなった。