夏の訪れ



じっとりと湿った空気がまとわりつく。クーラーはまだ早いと開け放たれた窓は意味をなさず、もはや生温い風しか入ってきていない。率直に言う。暑い。まだ猛暑じゃないよねって戸惑うくらい暑い。

最早日焼けだなんだと言っている場合ではないと、脱いだサマーカーディガンをイスにかける。刹那、氷のような冷たさが頬に当てられた。


「生きてる?」
「…今生き返った」
「そりゃ良かった」


軽く笑った一静に、胸が鳴る。
わざわざ買ってきてくれたのか「はい」と差し出されたそれは、溶けても大惨事にならない飲むアイスだった。おまけに私の好きな味。気配り上手な一静のことだから、たぶん覚えていてくれたんだろう。

嬉しさとときめきを胸に、お礼を告げる。前の席に座った彼は、同じアイスをくわえながら瞳を細めて笑った。相変わらずかっこいい。「美味しい?」って言葉に頷きながら、アイスを吸い上げる。


「一静好きー」
「俺もなまえ好きー」


窓の外は、綺麗な青空だった。