食い倒れデート



「ソースもええけどポン酢も捨てがたいな…」
「ほな私ソース買うから半分ずっこしよや」
「は? 天才か」
「もっと褒めてええで」
「そういうとこやぞお前」
「えー。あ、待って。私払う」
「ええよ別に。黙って甘えとき」


ぽんぽんと頭を撫でられ、出しかけた財布を戻す。さっきも奢ってもらったのになんだかなあ。一歩先でたこ焼きを注文している治の横から「マヨネーズ無しでお願いします」と顔を出す。屋台のおっちゃんは朗らかな笑顔で返事をしてくれた。


路面店が並ぶ賑やかな通りの一角。二人揃って猫型容器のタピオカミルクティーを買い、待ち合わせスポットとして有名な広場の階段へ腰を下ろす。

私が写真を撮っている間にいそいそたこ焼きを開けた治は、早速口に放り込んでほくほくしていた。フラットな服を卒なく着こなすイケメンから華が飛んでいる様子は、なかなか目の保養である。可愛い。周りの女の子達から物凄い視線が集まっているけれど、残念ながらこのイケメンは私のです。


「なまえも食べや。めっちゃ美味いでこれ」
「ほんま。もうちょい冷めてからにするわ」
「猫舌やっけ?」
「ん」
「ほな割っちゃろ」
「優し」
「やろ。もっと褒めてええで」
「デジャヴ」


しょーもなって笑い合い、爪楊枝で半分に割ってくれた治にお礼を言う。少ししてから「口開けや」と差し出された一切れはまだちょっと熱かったけれど確かに美味しく、本格茶葉のミルクティーもまろやかスッキリ。安物と違ってタピオカが甘い。


「ちょっと待っとって」
「? おん」


不意に立ち上がった治が歩いて行った先には串カツの幟。ああ、なるほど。ゴミを纏め、タピオカを咀嚼しながらのんびり待つ。両手に紙袋を持って戻ってくる嬉しそうな姿を動画に撮れば「有料やで」って怒られた。




【夢BOX/治と食い倒れデート、マネでも彼女でもOK、いっぱい食べる君が好き的なやつ】