曇りのち晴れと晴れ



「俺とサムと、どっちがええねん」


ああ、何でこうなったんや。目前には侑の小綺麗な顔。拗ねとんか怒っとんか、いまいち判別のつかん目。いっつも感情豊かやのに、こんな時だけつんと澄ましよるそれからは、じゃっかんの嫉妬心が窺える。傷んだ金髪が視界の端でちらついて、寄せられた鼻先。吐息が触れ合うような至近距離に、否が応でも心臓が鳴る。


「なあ、なまえ」


ベッドに縫い付けられた両手首が痛い。
やけに静かな声からして、やっぱり怒っとんのやろか。どうするんが正解なんかなあ。ほんま、何でこうなったんやろなあ。

治から借りたCDを返しにきたら、わざわざ来てくれたんやしお茶くらい出すわって言われて、宮家にお邪魔した。思えばそんだけや。リビングに行儀よう座って、のんびりお茶飲んどっただけ。侑がおつかい行ってる言うから、ほんならせっかくやし顔見てから帰ろかってなって、時間潰しに治が話し相手になってくれとっただけ。それのどこをどう見たら、そんな、私が侑と治の間で揺れとる感じ悪い女みたいになんねん。心外や。私めっちゃ一途やし、優柔不断とちゃうし。あれ、なんや腹立ってきたど。


「なまえ、なあって、」
「ええ加減にしいや」


ピシャリと空気を切った私の声に、侑の目が一瞬揺らぐ。「手首痛いねんアホ」って訴えたら、ちょっとだけ緩められた。いっそ離してくれたら、今すぐその首に腕回して熱烈なちゅーでもかましたんのに、ほんまつくづく思い通りにならん男や。

もうしゃーないから、ちょっと首を傾けて顔を突き出す。簡単に奪えた唇は、いつも通りカッサカサやった。


「侑が好きやって伝わった?」
「……よう分からんかったから、もう一回してもろてええ?」
「どつくで」



【夢BOX/宮侑とチューする】