優越的に染まれ



「私に気遣わんと彼氏と食べてもええんやで」って友達の台詞に生返事をしつつ、斜め後ろで双子の二年生にまとわりつかれている信介を見遣る。


「……あの双子めっちゃ邪魔やな」
「まあ懐かれとんのはええことやよね」
「なまえってほんま……こう……寛大やでな。あんだけ彼氏とられとったら、それ私の〜ってなるで普通」
「んー……部活の後輩に妬いてもなあ。男やし」


顔が良いあの双子は、男子バレー部の大事なスタメンだと以前聞いたことがあった。あまり頓着のない信介が誰かの話をするなんて滅多にないことだから、良く覚えている。『うるさいけど可愛ええとこもあんねん』と。まるで宝物を自慢しているようだった。きっと信介なりに可愛がっているのだろう。だから見守るだけにしている。それに、女の子に騒がれているタイプのイケメンは得意じゃなかった。

にしても、なんや大型犬に懐かれとるみたいやなあ。

微笑ましい光景に頬が緩んだ瞬間、信介と目が合った。丁度ええやんって笑った友達に肩をぽんぽんされ、仕方なく名前を呼ぶ。返ってきたのは「どないしたん」って落ち着いた声。喧噪の中でさえ真っ直ぐ届く、この世界で一番好きな音。


双子の内、金髪の彼の口が拗ねたように尖る。


「北さん、俺らより彼女さんですかー?」
「当たり前やろ」


無慈悲な即答に吹き出してしまったのは言うまでもない。別に双子の機嫌を損ねてまでお昼を一緒に食べたいわけではないから、誘いはしないまま。結局「ごめん、呼んだだけ」って誤魔化した。向き直った先の彼女は不満そうだったけれど、私は満足だった。