「その新作映画、面白そうだよね」
唐突に聞こえた声に、今朝コンビニで買ってきた雑誌から顔を上げると、前の席の伊武くんが頬杖をつきながら雑誌を覗き込んでいた。さらりと彼のきれいな髪が揺れる。
「うん、そうだね」
私もそう思ったから頷くと、雑誌から視線を上げた伊武くんは、私の顔をじっと見つめた。どうしたんだろう、私の顔に何かついているんだろうか。そう思って首を傾げる。
伊武くんは目を閉じて、ハァ……、と溜息を吐き出した。
「ホント嫌になっちゃうよなぁ、なんで気付かないんだろ。鈍感とか勘弁してほしいんだけど……、それとも、俺と一緒には行きたくないって事かなぁ……」
「え? な、なんかごめん……」
頬杖をついまま、私から顔を逸らしてぶつぶつと何かを呟く伊武くんに、若干戸惑いながらもとりあえず謝る。
一通り言いたい事を吐き出したのか、伊武くんは横目で私を見ると、空いている方の手で雑誌の誌面を指差した。さっき話した新作映画の記事だった。
「ねえ、なまえはこの映画観に行きたい?」
「え、うん」
私は素直に頷いた。伊武くんは私をじっと見つめる。
「じゃあ、一緒に行こう」
ひと呼吸おいて、なんだかふてくされたようにそう言った伊武くんの顔は、いつもより少し赤かった。