「うん、花が凍っているね」
若干の戸惑いを感じさせる声が聞こえて顔をあげると、確かにオレの持っている花束は、そこだけ霜が降りたように真っ白になっていた。かわいいお花を入れておきますね、と朗らかに笑った花屋の店員に非常に申し訳ない気持ちになる。あと自分のこの能力にもほとほと嫌気がさした。
凍りついた花束を見つめて凍りつくオレを見かねたなまえは、あきらかに無理やり明るい声を出す。
「で、でも、せっかく買ってきてくれたんだから、飾ろうか!」
そう言ったなまえの手が花束に触れた瞬間、ひときわ大きいバラの花が、首を切られたように丸ごと床に落ちる。なんだこの縁起の悪さは。冗談じゃない。
なまえは、ごめん、と焦ったように言って、すぐさまバラを拾い上げた。
「水……、は要らないものね、」
拾ったバラ眺めて呟いたあと、それを手に持ったまま、なまえはオレのほうへ両手を伸ばす。すまん。なまえと、心の中であの店員に謝りながら、凍りついた花束をなまえの手に渡す。
「ありがとう、黄河」
なまえが微笑みながら受け取った花束は、なまえの想像していたよりも重かったらしく、それを落とさないように力を込めたのか、花束はオレの目の前でバラバラに砕けた。見るも無残に。
必死に謝りながら破片を拾い集めるなまえに、いやいいんだ、と放心状態で首を振ったオレは、箒と塵取りを探しに、もう泣き出したいような気持ちでその場を離れるのだった。