「なまえ、やはり僕の相方は君にしか務まらないよ!」
何もしゃべらずにそのまま突っ立っていればカッコいい柊さんは、片方の手を胸に当てて、もう片方の手を私に向かってめいっぱい伸ばした。背景に薔薇の花が咲き乱れんばかりの笑顔で。入隊したての頃は、そりゃもうときめいたけど、彼の本性(というかなんというか)を知ってしまった今となっては、ただただため息が出るばかりである。
「それなら邪ティさんがいるじゃないですか」
そんな面倒な役を私に押し付けないでください、そう言って私は手で払う動作をした。つれないなあ、彼は困ったように笑う。それから、近くにあった椅子に腰掛けた。
あのありえないハジケっぷりを知った今でも、真剣な顔でまっすぐに見つめられると心臓がうるさい。
「確かに邪ティもその器だけど、僕はなまえの、そんな穏やかそうな顔なのに鋭すぎて痛いツッコミを繰り出す、そのギャップが好きなんだ」
「それ褒めてます?」
「もちろんだよ!」
本人に悪気はないんだろうけど、正直、褒められてるんだか貶されてるんだかわからない。
はあ、とか、どうも、とか、私はいつもあいまいに返事をする。
「だから一緒に芸人を目指そう!」
「あなたひとりでどうぞ」
突然手を握ってきて、真剣な顔でなにを言うのかと思えばそんなことで。私はコンマ1秒レベルで即答した。それどころかちょっと食い気味だったかもしれない。
柊さんは、速攻で断られたというのに、ほら、そういうとこが好きなんだよ。とか満面の笑顔を向けてきた。こんなに楽しそうな笑顔を見せてくれるのが私だけだと最近知って、やっぱりうれしいのだけど、そんなことを考える自分が少しだけ照れ臭い私は、わざと盛大にため息なんかついてみせる。