「おやびん! 私、コーラ買ってきましょうか?」
なまえの生意気そうな目がきらきらと輝く。その眼差しが向けられるのはおやびんにだけで。ほんのひとかけらで良いから、その眼差しが欲しいと思うオレはどうかしちまったんだろうか。
「お、気が利くじゃねーかなまえ! んじゃ、20本頼む」
「わかりましたー!」
「ちょっと待ちやがれ」
勢いよく手をあげて駆け出そうとするなまえの腕を掴む。20本のコーラを持って帰ってくるのはさすがにキツいだろう、そう思って、代わりに買い出しに行くと申し出ようとしたら、なまえはじろりと俺を睨んできた。
「さっさと離してよ。おやびんのコーラ買いに行かないとなんだから。あ、もしかして悔しい?」
挑発するように笑うなまえに、さっき言おうと思っていたこととは別の言葉が口から吐き出される。
「悔しいわけあるか! 買い出し行った回数てめーよか多いんだからな!」
「うっわ、なに自分の方が上ですアピールしちゃってんの? 私の方が絶対有能だから」
「ああ? ンだとてめー……! だったら、俺の有能さ見せてやるから買い出し代われ」
「断る。おやびんは”私に”頼んだの。あんたじゃなくて」
バチバチと火花が散るようななまえの目を見て、俺は自分のバカさ加減にほとほと呆れた。なんでいつもこう、喧嘩腰になっちまうんだよ。
「パチ美、2人が争うところなんか見たくない! ……ってことでジャンケンで決めろ」
俺たちの言い争いを見ていたおやびんは、パチ美モードに早変わりして涙を流す。そして一瞬で元に戻ると、俺たちに向かってビシッと人差し指を突きつけた。
なまえは「おやびんがそう言うなら……」と、ものすごく嫌そうな顔をして握った拳を突き出す。俺も拳を突き出すと、おやびんの掛け声でジャンケンが始まる。
「最初はグー、じゃーんけーん、ポン!」
俺はチョキを出して、なまえはグーを出した。その瞬間、なまえの顔がパッと輝く。一瞬、その笑顔以外見えなくなった。
「やった! ザマーミロ破天荒!」
なまえはオレに向かって思いっきり舌を突き出すと、真夏の太陽みたいな笑顔でコーラを買いに駆けて行ってしまった。
本当に、餓鬼かオレは。接し方が分からずに突っかかってしまう自分を殴ってやりたい。そう思いながら、おやびんの為に全速力で走って行ったあいつを追いかける。今度こそ、素直な台詞を言うために。