まだ大丈夫、まだ大丈夫。そう言い続けた彼女の前には、ありとあらゆる種類のお酒の空き缶が乱立している。それぞれ高さの違う缶が無造作に並んでいる様は、どこか都会のビル群のように見えなくもない。泥酔してテーブルに突っ伏し、呂律の回らない口でなにかを喋る彼女をみて、私は静かにため息をついた。
今から2時間前、私の部屋の扉をノックもなしに蹴り開け、缶のたくさん入った、今にも持ち手が千切れそうなビニール袋を両手に提げたLOVEは、私の顔を見るなり、ぼろぼろと涙を流し始めた。
ソファに座ってコーヒーを啜りながら、録画したドラマを見るともなしに見ていた私は、ソファから跳ねるように立ち上がると、子供みたいに声をあげて泣く彼女の手からビニール袋を奪い取って床に置いた。それから、嗚咽の混じった声で途切れ途切れに単語を吐き出す彼女を、玄関からソファまで導いて座らせる。
置いてきたビニール袋を持って戻ってくると、LOVEは両手で顔を覆って肩を震わせていた。私は、彼女の足元にそっとビニール袋を置いて一度だけ頭を撫で、コーヒーを淹れるためにキッチンへと向かう。彼女の嗚咽はずっと私の後ろをついてきた。
リビングに戻ってLOVEの前にコーヒーを置いた。彼女はまだ涙で濡れている顔を上げて、消え入りそうな声でありがとうとだけ呟く。私の淹れたコーヒーを一口飲んでマグカップを置くと、彼女は右手で無造作に髪を掻き上げた。
「もう、嫌になっちゃう、なんでいつもこうなの……」
綺麗な色をした髪の間から、また泣き出しそうな目が私を見つめる。
「いっそのこと、なまえと付き合っちゃえばいいのかもね」
LOVEは毎回決まってそう言う。私はそれが冗談だと知っている。
私は本気なんだけどな、と、喉まででかかった言葉をコーヒーと一緒に飲み込んで、私は曖昧に笑った。「なんてね」と笑い返して、LOVEは足元のビニール袋から缶を取り出して蓋を開ける。窓から差し込む夕日に照らされた彼女の頬を、一筋の涙が伝った。