朝から最低の気分だった。私はいま、足音も荒く、長くて陰気な廊下を歩いている。
どうしてあいつは、私の仕事の邪魔ばかりしてくるのか。ずたずたになった書類を両腕に抱えて、悔しいやら、怒りが収まらないやらで、私はもう泣き出したくなった。言っておくけれど、ぜったいに悲しいわけじゃない。とか、そんなことを考えていたら、ああもう、ほんとうに涙が溢れてきた!
こんなところを誰かに見られたら癪なので、書類が床に落ちるのも憚らずに右手の甲で涙を拭う。それから目を開けると、顔も見たくないあいつが立っていた。ちょっと驚いたような顔をして。
「なに、お前、泣いてんの?」
私は答えずに首を振る。あいつの声が、いつもの嘲笑うような口調ではなかったことに少なからず驚きながら。
あ、いや、そんなことより早く書類を持って行かないと。そう思って、床に散乱した書類をかき集める。そんな私の視界に、きれいにマニキュアを施した手が入ってきた。驚いて顔をあげると、ばつの悪そうな顔をしたあいつが、そっと書類を差し出してくる。
こんなことされたくらいじゃ、ぜったい許してやらない。そう言って、私はあいつの手から書類をひったくって走り去った。そのときの私の顔が、ちゃんと不機嫌そうに見えたことを祈りながら。