爆豪の遠ざかっていく背中に向かって思いっきり舌を出した。叩かれた後頭部がまだ少し痛い。
なんだかんだ難癖つけて突っかかってくるし、さっきみたいに近くを通り過ぎざまに頭を叩かれるし、この前なんか、私が緑谷くんとのヒーロー談義に花を咲かせていたら、芯の出たボールペンを投げつけてくる(緑谷くんに)始末。
眉間にシワを寄せる私を見て、前の席に腰掛ける三奈は愉快そうにくすっと笑う。
「爆豪ほんと腹立つ。なんかの手違いで自分が爆発すれば良いのに」
そう毒づくと、三奈はなんだかニヤニヤとした笑顔になって、でも爆豪さあ、絶対なまえのこと好きだよね。とか、そんなことを言い出した。
「冗談キツいわ」
私が引きつった顔でそう返したら、三奈はぐっと顔を近づけてきて、目をキラキラさせながら、三奈的証拠を並べ立て始める。
「だって、いっつもなまえにちょっかい出すし、なまえが男子と話してるのすごい顔して睨んでるし、緑谷に至ってはああじゃない? だから、絶ッ対、爆豪はなまえのこと好きなんだって!」
「絶ッ対ない。突っかかってくるのは単に私が気に喰わないからでしょ。睨んでるのもそう。緑谷くんは不憫としか言いようがない」
そう言って私が首を振ると、じゃあ証明したげる。と言って、三奈は自信満々の顔で腕を組んだ。それから、クラス全体に聞こえるくらいの大声で、
「えー!? なまえ、彼氏できたのー!? おめでとー!!」
と真っ赤な嘘を吐き出した。
途端にざわつき出す教室。見回すと、みんなの、わー、おめでとー!みたいな顔が見えて、お茶子ちゃんと梅雨ちゃんに至っては、小さく手なんか叩いている。
私が否定の言葉を口にしようと手を上げた瞬間、その手を後ろから誰かに強く掴まれた。ギギギ、と効果音のつきそうなくらいにゆっくりと振り向くと、ものすごい形相をした爆豪が立っている。私が黙って見上げている間にも、腕を掴む力がどんどん強くなった。
抗議のために口を開こうとしたら、爆豪がいきなり、掴んでいた私の腕を引いて半強制的に椅子から立ち上がらせる。
「ツラ貸せや……!!」
爆豪に腕を引かれて教室を出る時に振り返ったら、心配そうな顔をするみんなと対照的に、勝ち誇ったような笑顔を浮かべる三奈の口が、ほらね、と言うのが見えた。