あなたがあなたを嫌いでもぼくがあなたを好きだそれじゃだめなの

仕事で脇腹のあたりに深い傷を作って帰ったら、フーゴとブチャラティにこっぴどく叱られた。
もっと自分の体を大切にしろ、心配するこっちの身にもなれ。いつも同じだった。いつもみんな、そうやってやさしい。でも、私は私が大嫌いだった。自分の体がどうなろうが一向に構わない。
いっそ死んだっていい。そう言うと、みんなものすごく怒るか、ものすごく悲しそうな顔をする。そんなみんなのやさしさだけが、私が私を殺そうとしない理由だった。
2階のテラスで柵に寄りかかって空を見上げていたら、不意に名前を呼ばれた。視線を下げると、ナランチャがこっちに向かって歩いてくるのが見えた。彼は私の前まで来ると、脇腹に巻かれた包帯を見て、泣き出しそうな顔をする。でもそれは一瞬で、次の瞬間には真っ直ぐに私を見つめる瞳があった。なにかを決意したようなその顔に、私は首を傾げてしまう。
ナランチャは大きく息を吸って、静かに吐き出すと、意を決したように口を開いた。

「オレ、なまえが好きだ」

そう言った彼の、怯んでしまうほど真っ直ぐな瞳に、私は思わず俯いてしまう。そんなふうに思われる資格が、自分にはないと思ったからかもしれない。

「なまえがなまえのこと、好きじゃないってのは知ってんだ」

彼の口から出た言葉は、私が私を嫌って言う言葉より、もっとずっと辛そうで。

「でも、オレは好きなんだ。なまえがなまえを嫌いなのより、もっとずっと」

私の立つテラスの床の色が、ぽつぽつと変わっていく。喉の奥から嗚咽が込み上げてきて、私は両手で顔を覆った。

「それじゃあ、だめなのかよ」

そう言って私を抱きしめるナランチャの腕があまりにもやさしいから、明日も、明後日も、その先もずっと、私は私のままで生きていかなきゃならない。



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