※学生時代
「またなの?」
なまえは溜息を吐いて、やれやれとでも言いたげに首を振った。
「もういい加減にしたら?」
僕が差し出した手紙を受け取ろうとせずに、彼女は片方の眉を吊り上げて頬杖をつく。その拍子に、長い髪が優雅に顔に落ちかかる。それを払おうともしない彼女の目は、正確に僕を捉えたままで。心臓がおかしなふうに脈打っているのを気の所為だと決め込んだ。
「お願いだ、これを頼めるのが君しかいないって事は知っているだろ?」
また手紙をなまえに向かって突き出す。頬杖から腕組みへと体勢を変えた彼女は、それをじっと睨んだあとで、ふいっと顔を背けた。彼女の髪が宙を舞う。危うく顔を打たれるところだった。
「嫌よ。絶対に。死んでも御免だわ」
「なまえ……、」
名前を呼ぶと、さっと視線を僕に戻す。その目が怒りの所為かギラギラと輝いていた。
「どうして私を通すのよ? あなたが直接渡したらいいじゃない。"親友"なんでしょ?」
「いや、それは……、」
「ああ、そうだったわね。あなたが彼女を"穢れた血"呼ばわりしたものだから絶交されたんだったわね。忘れてたわ」
棘と嫌味たっぷりの口調で、傷口を抉るように言葉をぶつけてくるなまえ。謝罪をしたためた手紙をリリーに渡してくれと頼み始めてから、彼女はずっとこの調子だ。他のスリザリン生と違い、彼女はグリフィンドール生と交流がある。だから頼んでいると言うのに!
「なまえ、一体何が気に喰わないんだ? 君は彼女と仲が良いじゃないか!」
「あなたこそ! どうしてわからないの?!」
お互い椅子から立ち上がった。僕を睨む彼女の目が、心なしか涙で光っているような気がする。いや、気の所為じゃない……。
「ああ、もう……」
そう呟いて、彼女は目を伏せた。僕はそっと手を伸ばす。でも、この手が視界に入った瞬間、彼女は手が届かない位置まで身を引いた。ぱっと顔をあげたなまえの目には、やはり涙が光っていた。
「セブルス、私、あなたが好きよ」
目に涙をいっぱいに溜めたまま、彼女は震える声でそう言った。何かの聞き間違いかと思った。でも、彼女の顔は、彼女の目は、真剣そのもので。心臓が、またおかしな脈を打つ。なまえの目が瞬いて、次の瞬間、彼女は僕の横を駆け抜けて、行ってしまった。相変わらず心臓はおかしなまま、僕が右手にした手紙をぐしゃりと潰り潰すような音が、遠く聞こえた。