今から数時間前、ディセプティコンとの交戦でビルの一部が破損し、私は崩れてくる瓦礫からサリを助けるために飛び出した。そんな私とサリを庇うために、オールスパークを守っていたバンブルビーがその任務を放棄し、私たちを助けに来てしまった。
ラチェットが阻止してくれていなかったら、確実にオールスパークがディセプティコンの手に渡っていただろう。そのくらい深刻な状況だったのは、普通の人間である私でもわかった。なんとか事なきを得たが、バンブルビーはそのことでオプティマスから厳しく叱責されてしまった。オプティマス曰く「エマとサリの近くにはアイアンハイドもプロールもいたのだから、君が助けにいく必要はなかった」ということらしい。
ふてくされたように膝を抱えてソファに座り込むバンブルビーの隣に腰を下ろす。私が座ったことに気づいた彼は、叱責するような相手じゃなくてよかった、と思ったらしく、口元がわずかに綻んだ。
「あのときはありがとう。それから、ごめん。そのせいであなたが怒られてしまって」
「いや、いいんだよ。キミとサリが無事でよかった」
そう言って青い目を細めるバンブルビーに、私も微笑みを返した。彼は抱えていた膝を伸ばし、両手を頭の後ろで組んでソファにもたれかかる。それから私をじっと見つめた。少し笑いを含んだような目で。
「もし僕がナマエと世界を天秤にかけなきゃいけなくなってさ、どっちか選べって言われたら、僕ナマエをとっちゃうよ」
「今日みたいにさ」と、なんの躊躇いもなく口にされた言葉に、私は胸が締め付けられるような思いがした。
「だって、キミがいるから世界を守ろうって思うのに、いないんじゃ守る意味ないじゃん」
「でもこれ、ヒーローとして一番ダメなやつだよね」と、バンブルビーは困ったように笑う。その気持ちは素直にうれしいけれど、実際に天秤にかければどちらが傾くかなんて一目瞭然だ。私は彼の気持ちを汲みながらも、いざというときは見限ってほしい、と伝えるために口を開く。バンブルビーはすかさず手を振って、私が喋るのを遮った。
「あーダメダメ! 言わないで。”私より世界を救って”とか言いたいんでしょ。だからそんなの嫌なんだってば!……ていうか、なんでどっちかしか選べないみたいな話になってんだろ。単純明快、どっちも救えばいいだけの話だよね!」
そう自己完結すると、バンブルビーは納得したように頷いてソファから立ち上がる。
「ってことでさ、絶対どっちも救ってみせるから、”見限って”とか悲しいこと言わないでよ?」
私を指差して首を傾げながら、バンブルビーはほんの少し不安そうに笑う。私はそんな彼を見上げて、「じゃあ、絶対に助けて」と笑ってみせる。バンブルビーは「任せてよ!」と言って、今度はいつものように賑やかな笑顔を向けてくれるのだった。