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「はーい! ここがわたしたち、クロム自警団のアジトでーす! ほら、入って入って!」
リズに連れられやって来たのは北の街道。に、佇む1つの家らしき場所。
そこにはいくらか人がいる。おそらく、自警団のメンバーだろう。
そこの人達から視線が集まり、ルフレは居心地が悪そうに辺りを見回す。対してフィシカは慣れているようで、そんな中でも気取らず凛と立っていた。
「リズ! 無事でしたの?」
何処からともなく少女の声が響く。走りよってきたのは、何処か豪華に感じる雰囲気を纏った少女。右手には何故かフリル付きの傘。
あれで殴られたら痛そうだな、と呑気に考えつついると、リズが少女に応える。
「あ、マリアベル!」
「心配しましたわ! リズったら、もう! お怪我はございませんこと?」
リズやフィシカとは違う口調。この言葉遣いは貴族のものだろうか。
マリアベルと呼ばれた彼女はリズを不安げな目で見つめた。
「あはは! 大丈夫だよー!
お風呂とかご飯は大変だったけど」
熊肉だったしねえ、とは流石に言わなかった。マリアベルの不安を他所にリズは天真爛漫な笑顔。
これがリズのいいところなのだろうと染々思うフィシカであった。
「クロムはどうした? 俺様のライバルはビビって腰を抜かしてたんじゃねえか?」
一国の王子になんとも失礼な言い分である。フィシカが声のする方を見るとそこには体格のいいオールバックの男。
上半身が服というようなものに覆われていないのは気のせいだろうか。
「大丈夫だったよ。良かったね!
ヴェイクはお兄ちゃん大好きだもんね?」
「え、この人そういう……」
「ちげーよ! ていうかなんでだよ!
冗談でもよしてくれ、そういうこと言うのは!」
自己紹介を行う前から爆弾発言をしたように思うが仕方がない。何故ならそれがフィシカだから。
「クロム様もご無事……良かった……」
と、鎧を着る華奢な女性。これが普通の反応だろう。
……この国はどうも王族がフレンドリー過ぎる気がする。
「聞いてくださいまし! スミアさんは、クロムさんを心配するあまり毎日花占いをして……、
この部屋を花でいっぱいにしてしまいましたのよ」
なんだそのメルヘンゾーンは。思わず突っ込みたくなったルフレだったがなんとか堪えた。隣ではフィシカが笑いを堪えていた。なんとも凸凹なコンビである。
「あはは、ありがとうねスミアさん。
お兄ちゃんのこと心配してくれて」
「いえ、そんな……」
「ところでよ、この人達誰だい?」
「うわぁ凄く今更」
今度は我慢仕切れずに突っ込んだ。フィシカも我慢仕切れずに笑った。
そんな二人のことを置いて、リズは得意げに胸を張った。
「えへへ……じゃーん! 新しく自警団に入るルフレさんとフィシカさんですっ!
えっとね、ふたりともスゴいんだよ! ルフレさんは軍師の才能があるの! こう…きらーんって来てばーんみたいな感じ?」
「ごめんリズ、僕分かんない」
再びルフレが突っ込んだ。きらーんって来てばーんのイメージは誰にもつかめない気がする。
「フィシカさんは正義の義賊でね、困ってる人達を助けてたの!
それだけじゃなくて戦うのもスゴいんだよ! シュッて移動してざざざって感じ!!」
「あれ? リズ、私が戦ってるのって見てたっけ?」
「わたし杖しか使えないから、治療しながらフィシカさん見てたんだよ!」
スゴかったんだよー!
と、相変わらずなハイテンションで語るリズ。
思わずルフレとフィシカは顔を見合わせた。
「おお、なんかすげーぜ!」
「「擬音語で分かるの!?」」
二人でオールバックを見ながら突っ込んだ。なんだかどうしようもない空気に包まれてしまい、どうするか悩んだがルフレが会釈をした。
それを見てフィシカも辞儀を倣う。
「ルフレです。よろしく」
「フィシカでーす、よろしくお願いしまぁす」
相変わらず軽い態度のフィシカにルフレは苦笑を浮かべる。
そんな二人を見てマリアベルは苦虫を潰したような表情。
「……わたくし、庶民の方とお付き合いする気はありませんの。リズに馴れ馴れしすぎじゃありませんこと? 失礼させていただきます!」
それだけ告げるとマリアベルは去っていく。
立ち姿も凛々しい。凛々しいのだが何処か刺々しい。
「あーらら、フラれちゃったかなぁ」
おちゃらけた態度でフィシカは言う。特に気にしていないようで何故か楽しげだ。
気にしたらそこまでだと言ってしまえばその通りなのだが。
「あ、あの……。あまりお気になさらないでくださいね」
フィシカがちらと見るとルフレは少し残念そうだった。まぁ、初対面であれだけ刺々しい態度を取られると普通はそうなるだろう。
「ごめんね、ルフレさん。マリアベルはちょっと人見知りなの」
「いや、あれは人見知りというより…」
嫉妬な気がする。紡ごうとして止めた。
なんだかマリアベルの何かを崩してしまいそうだったから。
「あ、クロム様!」
鎧の少女が笑顔を浮かべて言う。
フィシカが背後を見るとそこにいたのはクロム。
ああ、クロム。そう呟こうとした時。
べしゃっ。
なんだか鈍い音がした。びっくりして勢いよく振り返ると何故だか鎧の少女が転んでいる。
足元には数枚の紙。おそらくそれに滑ったのだろう。
「えっと……大丈夫?」
フィシカが手を伸ばす。それを握った鎧の少女は苦笑いを浮かべながら立ち上がった。
「はいぃ、すみません……」
「だ、大丈夫かスミア?」
「うぅ……すみません。私ったらいつもこうで……」
スミアと呼ばれた鎧の少女は申し訳なさそうに眉を潜めた。……いつもこうとは、なんとも危なっかしい。