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「私とソワレ、ヴィオールとソールでペアを組んで、そのうえで四人行動する。
大まかな指示は勿論私が出すけれども、乗馬と降馬のタイミングは私とヴィオールが各々で判断。いいね?」
手のひらで短剣をくるくると回しながらフィシカは語る。
飄々としているようで隙のないフィシカの態度に、ソールはただただ感心するだけだった。
「ふむ……貴族的に異論はないのだが、少しいいかね?」
「何、ヴィオール?」
真剣な顔つきでヴィオールがフィシカに少しだけ歩み寄る。
今までにないくらい真っ直ぐなヴィオールの瞳に、見られてもいないソワレまでもが息を飲んだ。
そして、ヴィオールの口が開かれる。
「何故、私とソール君なのかね?」
「期待したボクがバカだったね。下心丸見えだよ、ヴィオール」
はーぁ、と大きくソワレがため息をひとつ。下心、とはつまり「二人で乗馬」だからだろうか。
ソワレのため息にフィシカは思わず苦笑いを溢した。しかしながらも、フィシカはヴィオールの質問に的を射た回答を与える。
「ここに来るまでの道中、私はいくらかソールの後ろに乗ってたでしょ。
その時に思ったの、ここまで体型が違うと乗馬で連携して戦うのは難しいって。
もう少し経験を積んでからなら出来るんでしょうけど、残念ながら今の私には出来ない」
はふん、とよくわからない声と共にため息が漏れた。
フィシカは、実のところ実戦経験が少ない。しかしながら、何故彼女はこんなにも戦いに関しての頭の回転が速いのか。
答えは簡単である。フィシカは、感じること≠アとが得意だからだ。
人の心の動揺、空気、間合い。全てを彼女は感じ取っているのである。
勿論、それだけで戦えるわけはないし、それを戦いに生かすのはフィシカのセンスだ。
それに関しては、彼女が生まれながらにして持ったものなのだろう。
「だからなるべく体格の近い私とソワレ、ヴィオールとソールをペアにするの。
ご理解いただけたかしら、ヴィオール?」
「ふむ、それならば納得だよ、フィシカ君」
「よろしい」
にこりと笑ってみせて、フィシカはソワレに視線を移す。
アイコンタクトを受け取ったソワレは直ぐ様頷き、自分の馬の首をそっと撫でた。
「……うん、乗っていいよフィシカ。この子も、どうやら君には心を許しているみたいだ」
「そうなの? それは光栄」
恭しく一礼して、フィシカは軽々とソワレの後ろに乗った。
馬は嫌がる様子をまったく見せず、むしろフィシカが乗ることを歓迎しているかのようにすら見える。
「ソール、ヴィオール、準備はいい?」
「え、ちょっと待ってよ、早い!」
「君たちが遅いんだよ」
得意気に笑うソワレは美人と形容するに相応しい。
ソワレは男勝りである。
が、しかしそれと同時に美しさも兼ね備えている、フィシカから見れば最強の麗人だ。
ほんの少しの羨望と、そして妬みと。そんなものを綯い交ぜにしながら、フィシカは彼女に憧れていた。
「よし、じゃあ行くよ」
「え、フィシカ僕の話聞いてた!?」
ソールの叫び虚しくフィシカは彼を一瞥。
そのまま息を吸い込んで、三人へ命令を下す。その瞳に微かな暗い炎が灯っていたことに、気づいた人は果たしていたのだろうか。
「私達はルフレ達とは反対から攻めるよ。敵の攻撃を拡散させるために、ね。
私達の目的は敵を倒すことじゃなくて、クロムやルフレ達の負担を減らすこと」
「了解」
「勿論向かってきた敵は撃破。万が一ルフレやクロムよりも先にあのアーマーナイトに辿り着いたら──
……っと、あんまり長話は出来ないね、行きましょうか」
「あぁ!」
ソワレとソールが二人で同時に馬を走らせる。馬に乗りなれていないフィシカとヴィオールはその早さに一瞬戸惑うも、すぐに前のめりになり体を馬へついていかせる。
馬が雪を踏みしめる。所々禿げかかって土が見えていた。
フィシカが瞳をソワレの前にやると同時に、何かがフィシカらの横を掠めた。
「……え」
「ふむ……やはり、馬に股がって弓は討ちにくいね」
「ちょっとヴィオール、いきなら弓討っちゃ駄目だってば!」
ヴィオールが涼しい顔をし、ソールが焦ったようにヴィオールを叱る。
それを見たフィシカは苦笑いを浮かべながら例の装飾短剣を取り出した。
「次弓無駄討ちしたら刺すからね」
「ま、待ちたまえ、今のは実験でだな……」
冷たい目線を一瞬ヴィオールに向けて、ソワレに体を寄せる。
戦はまだ、始まったばかりだ。
戦闘開始
(雪化粧が赤くなると想像すると寒気がする)(それ寒いからじゃないかな?)