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「邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ァ!!!」
「……ねえソワレ、僕、ああやって敵を倒している本見たことある気がする」
「奇遇だねソール、ボクも同じことを考えていたよ」
「ふむ……貴族的に美しくないね」


 フィシカが獅子奮迅と言った様相で敵兵の槍の柄や矢を切り落とし剣や斧を弾いている最中、ソワレ、ソール、ヴィオールの三名は悠々とした態度で馬の歩を進めていた。
 フィシカの様子をみているとどうも奇妙な冒険を連想してしまうことにソワレとソールは思わずため息をついた。
 勿論、そんなものが始まるわけもないのだけれど。

 ソールの正直な感想では、フィシカが一人いるだけでこの国境を打破出来る気すらする。
 こんな逸材が義賊だったと、仮に対峙したと考えると頭痛──ではなく腹痛すらしてくるような。
 そんな思案をしているうちに、フィシカは己のやるべき事を終えたようで。


「さて、武器が無くちゃ戦えないでしょう?」
「く……」
「……私はね」


 突然、フィシカは静かに口を開いて語り始めた。その瞳は何処か過去を思い返しているようで、憂いを秘めている。


「無駄な戦いはしたくないの」
「え? ……あ」


 言われて、気付く。
 フィシカは確かに戦いらしい戦いを行ってはいなかった。
 ヒトの体に傷はつかず、大地の雪に血の赤は染まっていない。

 そうだ。
 フィシカは今の今まで、敵の身を切り裂くことをせず、すべて武器を使えなくすることで敵兵を再戦不能にしているのだ。


「……だから、お願い。通して」


 そう語ってフィシカは、瞳をすっと細めた。有無を言わせぬ威圧をこめて。
 戦う術を持たぬ兵士達は勿論応じ──相当葛藤したようだが──扉を開ける。
 それを見届けると欠伸をひとつしながらフィシカは、


「──ありがとう」
「……!」


 いつのまにかソワレの馬に乗馬していた。それもまさしく瞬く間に、である。
 こういうのもミスディレクション≠ニ言うのだろうか、ソワレは詳細を知らないながらも感心の声を上げそうになった。


「ゴメン、ソワレ……私疲れちゃった。少しだけ、こうさせて」
「あぁ、勿論だよ。……だけど見事なものだね、フィシカ。あの動きは」
「ありがとー……」


 本当に疲れたと言った様子で、フィシカはソワレに寄り掛かった。

 馬に重みがかかった感じがしない。本当は最初からここにいたのではないか──と、ソワレは推測する。そしてその推測はほぼ正解に近い。

 フィシカは確かに乗馬していた──が、ただ乗っていたわけではない。
 短剣を操りながら、確実に武器を破壊しながら乗馬していたのだ。
 勿論そんなことは簡単に出来るはずもない。少しだけ乗馬降馬を繰り返して、である。
 その感覚はソワレに伝わっていない。それはフィシカの技の見せどころ、といったところか。


「ふぅ……」


 本当にここで疲れに潰れそうになっている少女がこの戦線を打破したというのか──感心すると同時に、悔しさが込み上げてきた。
 女だから≠ニいって訓練を妥協したことはない。しかし、ここにいるフィシカはそのソワレを軽く越える強さを誇っていた。
 同じ女性として過ごしてきて、しかしそれでも出来た差をほんの少し恨めしく思う。いったい、彼女はどうやって過ごしてきたのか──と。


「……この扉を潜れば敵将は間近なはず。三人とも、気を引き締めていくよ」
「あぁ!」
Dear, My Doll.