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「……あ、あなたがフェリアの王か?
……いや、王なのでしょうか?」
フィシカのアイコンタクトを受け取り、我に還ったように言葉を発する。敬語がぎこちないのは、きっと気のせいではない。
エメリナは言うまでもなく、リズも多少は敬語を使えるというのに、だ。なんと情けない王子なのだろうか。
「ああ、東の王フラヴィアさ。遠路はるばるようこそ、クロム王子」
フェリア王──フラヴィアは口の端を楽しそうにつり上げる。
やけに気さくな人。それがルフレの抱いた第一印象だった。そしてそれが払拭されることはこれからも、多分ない。
「フィシカと、やけに親しげでしたが……?」
「フィシカ? って、ああ、あの女の子かい?」
「予想に違わず初対面だよルフレ」
「歪みないなほんと!!」
ルフレの突っ込みも歪みないね、いつかピエロになれるよ。そんな声をかけながらフィシカはブレスレットを眺める。マイペースにもほどがある。
フラヴィアは破顔してから、申し訳なさそうに頭をかく。なにか、とクロムは一瞬顔をこわばらせた。
「国境では、うちの連中が失礼したね」
後ろではライミが複雑な面構えで控えている。それを見たフィシカも、微妙に顔をしかめた。
いくらライミのやり方が気にくわなかったとはいえ、少しだけやり過ぎたかも、と。実際問題少しどころの話ではないのだが。
それに気づいたらしいライミは、顔を少し柔らかくする。お互い様、ということだろうか。
少なくともフィシカはそうとって、口元を綻ばせた。
「いや……あ、いいえ。先ほど、イーリスを騙る賊が出没していると聞きましたが……」
そんな二人に気づくはずもなく、クロムは会話を進めていく。
どうにも敬語になれないらしい、噛みながら話すクロム。端から見れば、少し滑稽ではある。
「ああ、国境沿いの村々を荒らしてる。どうやらペレジアが仕組んでるようだね。フェリアやイーリス、両国を敵対させよう……ってところじゃないかねぇ」
「くそっ! あいつら……!」
激昂するクロム。
ルフレはそれを落ち着かせようと一瞬手を出しかけて──止まった。
ぴりぴり、と。
微かだが、しかし確実に──この空間の空気が、肌を刺したから。
ぼそり、一言落ちる。
「戦争だなんて……くだらない」
その声は間違いなく──フィシカのもので。そこに、明るみや柔らかさなんてものは孕まれていない。
あるのは──純粋な、殺意。
「フィシカ……?」
「え? ん、どうかした?」
ルフレが声をかけると一変。
刺さった空気は溢れ落ち、声はいつも通り柔らかな物に戻る。今の"あれ"は錯覚かと感じてしまうほどに──。
「いや……なんでも……ないよ。……それよりクロム、怒るのはわかるけど、一度落ち着いてくれ。フラヴィア様の前だよ」
「……あ。し、失礼しました。王の御前で……」
ルフレは本来の目的を果たすと口に含んだ空気を吐き出した。
フィシカもそうだが、クロムも周りを鑑みずに行動しがちである。これからもストッパーとしての仕事は、多分続くのだろう。
「おやぁ? クロム王子……。しゃべり方を無理してるだろ?いいんだよ、いつもの調子で話してみなよ」
「あっ……き、気付かれていたか」
「むしろ今ので気付かんかったら私フラヴィア様にどう接していいかわからないんだけどね!」
「そういうあんた…フィシカ、だっけ?フィシカも、じゃないのかい?」
「……いやー、私は一応喋れますよ。
勿論使わなくていいっていわれたら使いませんけども──」
ふふ、とイタズラな笑み。
それをルフレが見逃すことはなかったが、追及してもどうにもならないのは承知済みで。
──ああ、どうしてこんなに、謎が多いんだろう。
ルフレのそんな疑問が解決するのは、数年後のはなし。
「砕けた話し方しかできないのは、お互い様さ。……さて、本題に移ろうか」
飄々とした態度が変わる。何処か残念そうに、しかし隙は存在しない。
──やっぱり、王ってだけあるのね。
そんな言葉を心に含有して。
フィシカは、フラヴィアの言葉に耳を傾けた。
「……早速で悪いんだが、今、うちの兵をイーリスに貸すことは出来ないんだよ」
「──え?」
今まで静観していたリズから小さな声が上がる。
その瞳は少しの失望と、多大な疑問を宿していた。リズはその宿った疑問を、欲望のままに口に出す。
「そんな……どうして?」
そんなリズを見て心を痛めたような表情を浮かべたフラヴィア。ゆっくりと口を開いて、言葉を紡いだ。
「こういった事柄を決定する実権が今の私にはないんだよ」
瞳の奥に隠した
(ロンクーさんには見破られるしルフレには気づかれるし)(私もまだまだってことかしら)