Prologue
少女は一人そこで剣を振るっていた。
負けだということはわかっている。それでも、この村に住む人を逃がす時間を一秒でも伸ばしたかった。
傭兵業をしていて、何度も戦った経験のあるルドヴィカであっても、この戦を何十分も伸ばすことは出来ない。
それはルドヴィカ自身が一番良くわかっていた。わからないはずがなかった。
「っ、!!」
思い切り剣を振り抜き、そのままの勢いで柄を別の兵士にぶつける。ごんっと鈍い音がして兵士は膝から崩れ落ちた。
一体どれだけの時間戦っただろう。そんなものもう分からなくなっていたが、どちらにせよもうすぐ体力の限界が来そうだ。
村の人達はみんな逃げれただろうかな、なんて頭の片隅で考えているとカツカツと蹄の音が聞こえる。
はっと顔を上げればこの軍を率いていたのであろう男の姿がそこにあった。その顔は、よく知っている。
「……暗夜王国第一王子、マークス……」
「ほう、私のことを知っているのか」
有名な人だから、なんていやみを吐き捨てながら剣を握り直す。この消耗しきった体でこの男に勝てるとは思えなかったが、それでも時間稼ぎにはなるはずだと信じて。
姿勢を変えることなく、構える。自分の出来る最善を考えた結果は、これだ。
自分の命などとうの昔に捨てた、帰る国がなくなってしまったあの日に、捨てたのだ。どこで消え果てようと、同じだ。
同じだというのなら、一人でも多くの人を救って死ぬ。それがルドヴィカの考える自分の在り方だった。
「名は、なんという」
「……ルドヴィカ。ただの傭兵さ」
「ただの傭兵が、一人でここまで戦えるものかどうか、些か疑問ではあるが。……お前のその実力は、認めてやろう」
確かに彼の──マークスの言う通り、ルドヴィカはただの傭兵とは少し違う。が、それでも今はその身分と大差はない。
一言放つ体力すら惜しくてそれ以上は黙る。
一国の王子に剣を向けるのは、あの時≠ナもう終わったと思ったのだがこればかりは仕方が無い。
もう終わりにさせてくれ、そういう意味で切っ先をマークスへと向けるものの──誰かに間に割って入られた。
「マークス様、ガロン様より言伝です。その女傭兵を殺さず捕らえよと」
「……何?」
「…………」
殺さず捕えよ、か。捕虜にでもされるのだろうかと考えれば気分が悪くなった。
せめて、戦士としてのわがままを言うのならば死に場所は戦場がよかった。など。
それならこのまま彼らに切りかかった方がいいのではないか。
その方が奴らのことを攪乱させ、結果的に村人を逃がす時間が増えるのではないか。そこまで考えて剣を握り直した瞬間。
「──ごめんね、」
聞き覚えのある声が、ルドヴィカの背後からかかる。え、と振り向こうとした瞬間、重い衝撃がルドヴィカの後頭部を襲った。
ちかりちかりと視界が揺れ、意識が遠のく。誰かがこちらに駆け寄ってくるのが見えた気がしたが、もうそれを確認する力はない。
「恨んでもいいよ」
それが──ルドヴィカが記憶を失う前に聞いた、最後の言葉だった。
Fire Emblem Se
(それから、月日は流れ)
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