たまには選んでよ

 私の好きな人は国王の側近だ。国王がまだ王でない頃、聖王代理であった時から──否、それより昔の、王子だった時からそうだった、と聞いている。
 そのことに関してどうこういうつもりは無い。それが彼の仕事であって、生き方でもあるから。そういうことをしている彼の顔はとても輝いているし、その時の顔を好きになったのは他でもない私だ。
 だから、何か言うことは無い。言うつもりも、権利もないのだろう。だけれど。


「あ、フレデリク、この後なんだけど……」
「すみませんなまえさん、急務が入ってしまって少し……」
「……ん、そっか」


 言葉を数度交わして、最後にすみませんと呟いてからフレデリクは私の前から去っていった。このやり取りももう慣れたものだ。慣れたくなかったけど。

 国王の側近、なんて言う立場になれば、それだけ仕事の量は多くなる。
 それでなくても、彼は主であるクロムに対して異常とも言えるほどの過保護で、道中の石ころを拾って彼が怪我をしないようにと努めることもあって、そんなことを毎日していればプライベートな時間が無くなるのは当然のことだった。
 ……プライベートな時間がない、と言うよりは、プライベートな時間も国王のために当てている、という表現の方が適切だろうか。

 とにかく、フレデリクはそういう人だ。それを承知で好きになったのは私だし、だからこそそれにとやかく言う権利はない。
 ないから。この思いは、私の理不尽なわがままだ。





「って、思ってはいるんだけど……」


 机の上に項垂れて、私は隣にいる親友に声をかけた。彼女は国王の半身で、軍の軍師である人だ。忙しさはフレデリクと同等くらいか、もしかしたらそれ以上かもしれない。
 それでも私と話す時間を作ってくれるのは、彼女が私の親友故なのか、それとも優秀だから仕事を早く終わらせることが出来るからなのか。どっちもだったら私は嬉しい。


「つまり、寂しいんですよね?」
「まぁ……」


 親友の指摘にはぁ、と深いため息が漏れた。その通り過ぎて、他に言葉はない。
 寂しい。私は、寂しいんだ。仕事にフレデリクを取られているような気がしてしまって、どうしようもない寂しさを抱えている。
 親友の指摘は尤もで、だからこそ自分の口から告げられなかったそれを眼前に提示されて少し心苦しくなる。
 だっておかしいでしょ、寂しいも何も、元々フレデリクはそういう人だったのだから。そこに介入したのはあくまで私で、仕事の方ではない。




※未完
Title...反転コンタクト
2019.08.13
Dear, My Doll.