七月下旬。朝が早いのにも関わらず、日差しが強く、じりじりと体を焼き付けて体力を奪う。それに湿度が高いものだから、じめじめとしている。それらが一緒になることで暑さが増長されているような気がする。地方では、四十度に近い気温を観測しているようで、もはや地獄だ。そういえば、最高気温が四十度以上の日は酷暑日と言うようになったと、いつだったかニュースで耳にした。
ナマエは暑さにやられそうになりながらもなんとか、働いている探偵事務所──横浜九十九課までたどり着いた。家から事務所までの道はこんなに長かっただろうか。
「はあ、涼しい……死ぬかと思った」
ドアを引いた瞬間、冷たい空気がナマエを包み込む。汗をかいたからか、首元がひんやりとして気持ちがいい。もう外なんてでないからねー、ナマエはたまごをウォッチするゲームの可愛らしいキャラクターのようなことを心の中で呟いた。先ほどまで暑さに堪えていたナマエには、クーラーのよく効いた事務所が幸せでしかない。外がサウナだとしたら、事務所は水風呂。これが整うってことか。ナマエはそこまでサウナに興味があるわけではないが、今ならサウナ愛好家の気持ちがわかるかもしれないと思った。正直、暑いのは勘弁だが。
「あっ。ナマエさん。おはよう」
事務所に入ると、ソファに座っている青年──杉浦文也に声を掛けられる。
彼はナマエの同僚で、この事務所の調査員でもある。パルクールが得意らしく、ちょっと大変な依頼のときはよく建物をよじ登ったり、飛び移ったりしているのをよく見かける。それに、頭も良く調査のときはほとんど杉浦に頼りきりだ。
探偵になる前は、色々あって神室町の窃盗団(本人曰く、悪党からしか物を盗まない義賊らしいが、似たようなものだろう)にいたらしい。確か、そのときに元々顔見知りだったという神室町の探偵の八神と再会し、それから紆余曲折を経て、探偵を志すきっかけができたと言っていた。
そして九十九課にはもう一人、所長の九十九という男がいるのだが、さっと事務所内を見渡しても見つからないため不在のようだ。
ナマエは杉浦におはようと返したあと、一先ずロッカーに荷物を放り込み、インスタントコーヒーを淹れる。テーブルにコーヒーカップを二つ置いて、出勤してすぐではあるが、一息つこうと杉浦の向かいのソファに座った。
コーヒーを用意したのに気づいたのか、向かいからありがとうと声をかけられる。やけどをしないよう気をつけてながら飲もうとして、やめた。なんとなく、違和感を覚えた。
※編集中


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