絡めた指先と君と

教団も静まり返る真夜中。布団に入ったはいいがなかなか寝付けず、手元の時計を見れば、時刻はおよそ2時頃。
そんな私の隣ではラビが能天気にいびきを立てていた。


「ラビー」


声を掛けてみるが、返事はない。
寝る直前に突然訪ねてきた彼は、確か1週間ほど任務に出かけていたはずである。帰ってきてすぐに私のところに来てくれたようで、シャワーを浴びてから布団にくるまって話をしている間にラビは寝てしまった。寝る時でも眼帯を外さない彼は、だらしない顔をして私の布団で締りのない顔をしている。
気を許して貰えているのはうれしいのだが、それでもほったらかしで寝られると立場と言うものがないような気がするのは何故だろうか。こっちはラビと話したことで目が醒めてきたらしく、何故か理不尽な怒りが湧いてきた。


「よい、しょっ」


身体を少し起こしてラビを少し見つめた後、ラビの唇に自分のそれを重ねる。
ちゅ、と軽いリップ音を立てて、唇を離し至近距離で見つめてみたが特に表情は変わらない。完璧に寝ているな。


「はー…かわいい…」


仕方ないので、ラビの頬を指でつんつんしながらいろんな方向に跳ねている赤い髪の毛を撫でつける。
頭を撫でたときに彼の顔が少し柔らかくなった気がした。


「ちょっとは私に構いなさいよ」


湧き上がってきていた怒りは寂しいという感情になって口からこぼれる。しかし言ってみた所で、ラビが眠りから覚めることもなく、ただ静寂が流れた。
一通り寝ているラビを堪能してから、彼の首筋に顔を埋めてみると、少しではあるがラビの匂いがした。彼は基本的にあまり匂いがしないけれど、やっぱりここで生きているということが実感できて、何故か安心した。


「なまえ…そんなことしてたら襲っていいさ?」
「…え」


ラビが寝ていると油断していたため、急に耳元で聞こえた声に反応が遅れる。気がつくと身体が反転していて、目の前にニコニコ顔のラビのドアップ。その向こうには、見慣れた天井が見えた。


「ラビっ、いつから起きてたのっ?」
「秘密さー」


焦る私とは対照的に、くつくつと、至極楽しそうに笑ったラビからは、いつものニコニコした顔は消えていた。そして、ラビが任務に行く前の日に嫌というほど見た、あの時の、獲物を狙う様な獣の目をしていた。


「ら、ラビ」
「誘ってんさ?」
「ち、違っ、…ん、ふ、っ、」


少し怖くて、小さく名前を呟けばそれがラビのスイッチを押してしまったようで反論をする暇もなく、ラビの唇が重ねられた。舌がいやらしく絡まる。酸素が足りなくなってきたのか、頭がぼーっとしてきた。
ちゅ、と音を立てて離れた唇が妖しく光っていて目が離せない。


「ん、なまえもう限界?」
「違う、けど、」


久しぶりで身体が着いていかない、と荒い息で言えば月明かりで見えるラビの頬が綺麗に染まっていくのが見えた。すごく、珍しいものを見られた。


「なまえの馬鹿、」


小さく呟いたラビは、赤くなった顔を隠すように肩口の所に顔を埋める。何かを呟いていたけれど上手く聞き取れず、息がかかって少しこしょばゆい。近くにある彼の頭を優しく撫でていれば、彼がびっくりしたような気配がした。


「なまえ、俺も目が冴えてきたから、据え膳食べてもいいさ?」


少し経って顔を上げたラビは何時もより可愛く見えて、そんな彼の言葉に小さく頷く。それに安心した様な顔をしたラビの唇がまた降ってきて、目を閉じた。

いつの間にか絡められた指先から、ラビの想いが伝わってくるような気がした。



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(ほんとに俺、止まんないよ?)
(馬鹿うさぎ、)
(なまえかわいいさー)