例え神の掟に背いたとしても
いつ、お腹が空いて人を襲うか分からない。
いつ、エクソシストと出会って壊されるか分からない。
そんな、普通の人とは違う不思議な環境下で、私達AKUMAは人間社会に溶け込んで生きている。
友達なんて出来やしないし、ましてや恋愛も出来ない。全部、お腹が空いたときのご飯になった。
しかし、私というAKUMAは少し違っていた。level2になってようやく自我を持って生まれた時、伯爵様が取り除いてくれている筈の余計な感情が何故か残ってしまっていていた。例えば、人間のことが大好きだったり、それらを食べたくないと思ったり。
AKUMAとしては異例中の異例である。
しかし、それでもお腹は空くので、私のこの感情を伯爵様に伝えれば、至極楽しそうな顔をして、なまえ、という名前を下さった。
そして、今後のためにノア様達の方舟で給仕の仕事をさせて貰っている。お腹が減った時は方舟から降りなくても、何かしらを伯爵様が与えてくださる。それなりに充実した生活である。
「ロード様、準備が整いました」
「うん。なまえ、ありがとー」
大体は長子のロード様のお世話、という名の遊び相手をする事になっている。主に、お勉強のお手伝いをしたり、伯爵様に悪戯をする準備をしたり、レロを盗んできたり。…あれ。ろくな事してないな。
そんな生活の中で私は、あの人に出会った。
とても人間が大好きで、そして人間が大嫌いな人。彼の本当の心はよく分からないけれど、私はどうしようもなく彼に惹かれてしまった。
私はAKUMAと人の間で、彼は人とノアの間で。その2つは似たところを持ってはいるけれど、きっといつまで経っても相容れることは出来ない。哀しい運命。
「なまえー」
「はい、どうしましたか?」
「今日はティッキーで遊んできて良いよぉー」
仕事をしている私にロード様からかけられた提案は私の気持ちを乱すのには十分であった。ワタワタと誤魔化すように「宿題は終わりましたか?」なんて問いかけてもロード様は至極楽しそうに笑っておられた。
私の気持ちはこの長子様に知られており、時々こうやって気まぐれにティキ様の所へ行かせてくれる。ロード様や伯爵様が何を考えているのかはわからないけれど、それでもティキ様に会えるのは素直に嬉しい。
ティキ様のお部屋を掃除をする準備をしていれば、ロード様に「鼻唄なんて歌って、ご機嫌だね」なんて言われてしまう。仕方ないのです。
「ではロード様、きちんと宿題終わらせおいてくださいね」
「…」
「返事をしてください…」
「気をつけてねー」
今日の分の宿題をお伝えすれば素早く目をそらされてしまったが、ロード様のお部屋から出て、ティキ様のところに向かう。
ティキ様は真面目だ。私とあんまり会話らしい会話もしないし、伯爵様に悪戯を仕掛ける事もない。
お部屋の掃除をして、洗濯物を綺麗にして、あぁ挽き立てのコーヒーを持っていこう。
そんなことを考えてる時間が一番幸せだったりする。それに、そんなティキ様が好きなのだ。
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ティッキーが出ない罠←