高い壁に一撃を
「なまえちゃん、一緒に帰ろう?」
「あ、月子ちゃん!ごめんね、今日はちょっと用事があるから先帰ってて」
「そうなの?私待ってようか?」
「ううん、大丈夫。遅くなると悪いし」
折角、月子ちゃんがクラスまで来て声をかけてくれたけれど、今日の私には予定があるのだ。
残念そうな顔をして帰っていく月子ちゃんを見送ったあと私は、ちょっとした予定というか用事というか、先日から思っていたことを遂行するために校内をうろついた。
彼は、保健室にはいなかったし、星月先生も知らなかった。どこへ行ったんだろう?
…と探していたら、廊下の先に見慣れたオレンジ色が歩いているのが見えた。
「直獅せんせーっ!」
「うわぁっ!何すんだお前!て、みょうじじゃねーか。どうした?」
私が探していた直獅先生は、この学校の先生の中でも特に小柄。直獅先生を見つければ、体当たり並みの勢いをつけて抱きつくのが日課になっていた。
人間、一つのことができると貪欲になるもので。いつの間にか、先生に生徒として見られるのが足りなくなってしまった。先生ともっと仲良くなりたい。手を繋いで歩いたり、キスしたりしたい。つまり私は、直獅先生に惚れてる訳である。
「あのね、先生。私悩みがあるんだけど…」
「どうした?」
「私、その人の事を見ると苦しくて、でも、とても幸せなの」
「ほぅ…それは恋だな。で?どんな奴なんだ?」
「小柄だけど一生懸命で、笑顔が素敵な人だよ」
「みょうじなら、大丈夫だよ。俺が保証するぞ!」
「ほんと?…直獅先生ありがとう。私告白してみる」
「おうっ。頑張れ!」
にかっ、と笑う直獅先生。そんな笑顔も素敵です。なんて、今からすることから目を背けてみようとするけれど、そんなことができる筈もなく。
足が震えるし、喉だってカラカラ。でも私は見てるだけじゃ嫌で、今日は距離を壊してみたくて。
だから、意を決して口を開く。
「直獅先生、」
「ん?まだ悩みがあるなら、相談に乗るぞ」
「そうじゃなくて…私、直獅先生のことがずっと前から好きです」
「へっ?みょうじ、冗談…だよな?」
「私が冗談言っている様に見えますか?」
「いや、見えない、けど。でも俺は教師だし…」
私の告白が意外だったのか。意識してもらっていないのはわかっていたけど、これは悲しいかもしれない。
でも、あたふたしながら真剣に言葉を受け取ってくれた直獅先生を見ていたら、ちょっとだけ嬉しくなった。
「先生、」
「な、何だ?みょうじ?」
「今日はこれだけ言いたかったんです。だからこれから覚悟しておいて下さいね、直獅せーんせ?」
宣戦布告をしてにっこりと笑えば、面白いくらいにあたふたする直獅先生がいた。
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(みょうじ、い、いや、でも)
((かわいー))