雨降りと放課後

朝から玄関の段差で躓いた。苦手な数学では抜き打ちテストがあった。挙句に、お昼には大好きなクリームパンが売り切れてるし、自販機に寄ればカフェオレも売り切れていた。
散々な一日で、そして帰ろうとすれば追い討ちをかけるように土砂降り。傘は寮の自室に置いてきたところです。


「はぁ…」


昇降口の前で溜め息をつきながら空を睨んでも、雨は一向に止まない。走って帰るべきだろうか。
止むのを待つという手もあるけれど、あと30分もすれば見たいドラマの再放送が始まるので、今すぐにでも帰りたい。
うんうん唸ってもいい案は浮かばず、そんな私を横目に他の人たちは傘をさして続々と帰っていく。誰か知り合いが通らないだろうか、と思って見渡せば月子ちゃんの幼馴染である七海くんと目があった。


「何やってんだ?」
「七海くん、えっとね実は…」


かくかくしかじか。
私は傘がないことと、そして今日の不幸を七海くんに話す。


「お前、バカじゃねーか!ぷはははっ」
「笑い事じゃないよ!だから、走って帰るの。すぐそこだし」
「それとこれは、別の話だろ」


七海くんはそう言うと、残念な子を見る目でこちらを見ていた。いや、私だってこの考えはどうかと思うけど傘がないし、雨が降っているのは仕方がないじゃないか。


「はぁー、みょうじはほんとにバカだな」
「知ってる?七海くん、バカって言う方がバカなんだよ」
「はぁっ!?それなら、お前も今バカって言ったじゃねーか」


七海くんとの不毛な争いを始めてみたけれど雨は一向に止まない。そろそろ帰らないとドラマが始まってしまう。私は、やれば出来る子!


「じゃ!七海くん、私帰るね!」
「はっ!?いや、待てって」
「ぐえっ」


時間が惜しくなり七海くんに背を向けて走り出そうとした筈なのに、七海くんに襟首を掴まれて情けない声がでる。


「まぁ、何だその…」
「どうしたの?あと15分しかないから手短にね」
「…俺、傘持ってるから入るか?」
「え?」


時間が気になってちょっと七海くんを睨んでしまった。けれど、顔をよく見れば照れ屋さんなりにがんばってるらしい。
その証拠に耳まで真っ赤だ。


「ありがとう!七海くん!さすが友達」
「…友達だけじゃ、傘に入れたりしねーよ」
「ん?何か言った?」
「何もねぇよ!帰っぞ!時間ないんだろう?」
「わわっほんとだ。帰ろう七海くん!はやくはやく」
「…おう」


人使いが荒い、とか言いながらも傘を広げて待ってくれてる七海くんは、何だかんだで優しい人間である。ちょっとヤンキーっぽくって怖いって思っててごめんね、と思いながら帰路についた。
相合傘だね、と言えば真っ赤になって黙ってしまった七海くんに恋してしまうのはまた別の話。



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(七海くんは優しいなー。好きになっちゃいそう)
(はっ!?)