あまい話には裏がある

「これは…」


先週の小テストを眺めて出た第一声。なんと、4点。え?今回のテストって、5点満点だったっけ?確かに今回の範囲はまだ理解ができていなかった。勉強しなければ確実に赤点である。授業の終わりに返ってきた小テストは、私にこの範囲の不得手をしっかりと気づかせてくれた。
テストの結果に絶望していた私は、後ろから誰かに覗き込まれていることに気づかなかった。


「うわっ。何それ?もしかして、みょうじって馬鹿だったの?」
「っ!何で人の点数見るの!?」


プライバシーも何もないよ!、と言いながら後ろを向けば、私のテストを見てびっくりした顔の木ノ瀬くんがいた。木ノ瀬くんは、顔はこの学校じゃなかったらすごいモテただろうなー、てぐらいの男前。でも少し身長がちいさくて、性格がよろしくない。今みたいにすぐ意地悪なことを言う。


「今、凄い失礼なこと考えてるでしょ?」
「いやっ、全然、まったく、そんなことないよ!」
「どうだか…あ、そこの問題出来なかったの?ほんとに大丈夫?」
「…まだ理解ができなかったんだよ。ちょっと頭がポンコツなの」


そう答えれば木ノ瀬くんはやっぱり残念なものを見る目で見てきた。本当に失礼だな君!


「授業のときからみょうじ、わかってなかったみたいだし教えてあげようか?」
「え?」


唐突な木ノ瀬くんからの提案に聞き返すことしかできなかった。え、あの木ノ瀬くんが私に優しいですと!?明日は槍が降ってくるかもしれないな。


「ほんとみょうじって失礼。思ったこと顔に出てるよ」
「うっ…ごめんね」


思っていたことは木ノ瀬くんにバレていたようで、少ししかめっ面をされるけど、私に教えてくれる選択肢は残っているらしく、どうすんの?、と目が訴えていた。タダで教えてくれるとは思えないけれど、でも、赤点がすぐそこで待ち構えている。この分野は本当に苦手なんだ。


「お願いしてもいい?」
「うんいいよ」
「ほんとう?木ノ瀬くん、ありがとう!」
「お礼は?」
「え?」


にこー、っと効果音がつきそうないい笑顔で尋ねてくる木ノ瀬くん。
なんだかすごく嫌な予感がする。赤点よりも何やら身の危険が迫ってかもしれません。



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(何にしようかなーとりあえず、梓って呼んでくれる?)
(…そんなんでいいの?)
(なまえてば何を期待してたの?)