09

その後、クルトとエマさん、それに町長のマルクさん達には事情を説明して村を立ち去った。村の人達には、魔女に連れていかれたとか何とか説明してくれるらしい。
クルトは「それ終わったら、また一緒に暮らしてやるよ」なんて何とも可愛らしいプロポーズをしてくれた。うん。お姉さんは嬉しい。きっと無事で帰ります。


「―と言うことだ。解ったか?」
「うん」


最初の出会いが良かったのか悪かったのか、神田は特に馬鹿にすることもなく教団について説明してくれた。考え事をして半分聞いてなかったが、まぁなんとかなるだろう。

そして、神田は今16才と言うことが分かった。と言うことは、大体原作開始の2年前の様だ。これからどんな任務があるかは分からないが、せめてアレンを見るまでは頑張ろうと思う。


「おい、木芽降りろ」
「あ、うん。今いく」


神田に急かされて乗っていたボートから降りる。
階段を上って黒の教団本部に着けば、団員からの視線が遠慮なく突き刺さるのが分かった。
もう少し、遠慮ってものを覚えるべきだと思う。例え、仏頂面の神田が女の子を連れて歩いていても、無遠慮に見るべきじゃない。


「コムイ、入るぞ」
「…はいはーい」


室長室に着いたようで、神田がノックして部屋を開ければ、漫画で見たのと同じ散らかった部屋が目に飛び込んで来た。この部屋の主であるコムイは、部屋の中ほどにある机に向かいながら珍しく書類と格闘していた。


「コムイ、適合者を連れてきた」
「うん。神田くんありがとう。…はじめまして、黒の教団にようこそ。僕は室長のコムイ・リーです。よろしく」
「木芽奏です、よろしくお願いします」


神田にお礼を言ったコムイが此方を向いたので、自己紹介をする。ふざけなければこの人も室長っぽい言動ができるんだなぁ、と失礼な事を思う。


「神田くん報告書は今日中によろしくね」
「あぁ…じゃあ俺は部屋に帰る」
「うん、神田ありがとう」
「あれ?神田くんってば何でそんなに優しいの?」
「チッ、じゃあなっ!」


折角声を掛けてくれたのに、コムイさんの一言で神田は怒って帰ってしまう。コムイさんは、神田くんこわーい、なんてきゃあきゃあ言っていた。誰のせいだ、誰の。


「じゃあ奏ちゃん、ヘブくんの所に行こうか」
「ヘブくん?」
「うん、ヘブくん。終わったらイノセンス見せてね」


ぱちん、とウインクをしながら部屋を出ていくコムイさんを慌てて追う。
エレベーターを降りて着いたのは、真っ暗な空間に降りる。部屋の真ん中には白く浮かぶ、人ではない人の姿。


「何っ、これ」


前に立てば、ふわりと持ち上げられる感覚と、身体中を何かに探られる感覚。
原作でアレンが気持ち悪がってたのがよくわかった。




世界に染まって生きていく
(き、キモい…)
(えらくはっきり言うね…)